研究課題/領域番号 |
20K06368
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
白石 純一 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 講師 (50632345)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カダベリン / ニワトリ / 初期栄養 / エネルギー代謝 / 脳機能 |
研究実績の概要 |
本研究は、ポリアミンの1種であるカダベリンの初生ヒナの脳と末梢器官における生理学的意義を明らかにすることを目的とした。初年度(本年度)は卵中カダベリン含量が①ニワトリ胚発生に及ぼす影響、②孵化時体重と器官発達に及ぼす影響、③初生ヒナの血液性状に及ぼす影響、④孵化後7日間のヒナの飼料摂取量および増体に及ぼす影響を調査した。また、⑤ニワトリヒナの各器官に発現するポリアミントランスポーター遺伝子の初期発現量について検討した。 ニワトリ胚への高濃度のカダベリン刺激は胚発生を停止する作用があるものの、低濃度刺激の場合、その後の体重や器官発達に大きな影響を及ぼすことなく発生することが明らかになった。そして、低濃度カダベリン刺激は、ニワトリヒナの筋タンパク質合成に深く関与するアミノ酸代謝経路を賦活化することが推測された。胚時期のカダベリン刺激によって、孵化後7日間のニワトリヒナの飼料摂取量および増体に大きな変化は観察されなかった。ポリアミントランスポーターは、ニワトリヒナの全身に発現し、とくに間脳および骨格筋に強く発現することが明らかになった。 以上のことから、カダベリンシグナルはニワトリの初期発達に影響を及ぼす生理活性物質の1つであることが示唆されるとともに、次年度以降の生体内カダベリンシグナルの変動と生理反応との関連性について解析することによって、カダベリンの新たな生理機能が明らかにできると考察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の生体内カダベリンシグナルの評価において、効果的な投与量が推定できたこと、ターゲットとなる代謝調節器官が推定できたこと、カダベリンシグナルによって賦活化する代謝経路が予想できたことから、次年度以降の生体内カダベリンシグナルの生理学的意義の解明に大きく貢献できる成果が上げられたと判断できた為。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ニワトリの初生期におけるカダベリンの脳と末梢器官におけるエネルギー代謝調節に及ぼす影響についてin vivoおよびin vitroの観点から研究を進める。具体的には、①カダベリンシグナルによる活性化が予想される間脳および骨格筋における糖・脂質代謝に及ぼす影響について分子生物学的あるいは生化学的手法を用いて評価する。②初代培養細胞系を用いて、カダベリンシグナルが神経新生あるいは骨格筋発達に及ぼす影響について検討する。そして、③高速液体クロマトグラフ質量分析計を用いて生体内カダベリンシグナルの高精度な定量系を確立して、生体内カダベリン濃度の変化とエネルギー代謝調節因子との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究は計画通りに遂行でき、研究予算も余裕をもって執行できた。その結果、発生した残額3,407円については、次年度の予算と合算して研究遂行したほうが効果的であると判断した為。
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