研究実績の概要 |
2022年度は前年度に引き続き、生涯にわたって原始卵胞数と生殖能が高く維持されるD11投与マウスと無処理区マウス間で得られた新生仔期卵巣のRNAシークエンスの追試験ならびに差次的遺伝子群の詳細解析を進めた。また構築したマウス新生期卵巣培養系で、TNF-αリガンド阻害剤(IFX)添加の影響を評価し、生体投与の影響との同異を調査した。 1.RNA-seq.解析により、D11区では26,715遺伝子が発現しており、628個の差次的遺伝子のうち発現量が2倍以上に増加したものが37個、発現量が1/2以下に低下したものが17個みられた。これらの中で、DNA二本鎖切断修復をおこなうMRN複合体構成因子であるRAD50の発現量はD11区で8倍以上に増加していた。現在、形態学的解析を進めている。また卵巣切片におけるBrdU陽性細胞数の評価を行った結果、対照区と比べてD11区で有意に低くなっており、オートファジーの促進により卵巣内体細胞の増殖が抑制されることで、卵巣内で原始卵胞のまま維持されることが考えられた。 2.C57BL/6J系あるいはICR系マウスでの新生期卵巣培養系における3日間の2.5-10 ug/ml IFX 添加培養では、原始卵胞数への顕著な影響はみられず、一次卵胞数は増加傾向にあった。さらにC57 BL/6j系マウスでの10日間(IFX 3日間+無添加7日間)の5 ug/mlIFX添加培養では、原始卵胞数は減少傾向、一次卵および二次卵胞数は高い傾向にあった。生体でみられたIFX投与による原始卵胞数の増加はみられなく、原始卵胞の活性化の促進のみ確認された。一連の結果から、TNF-αを介する卵母細胞のアポトーシスの抑制は、原始卵胞数の増加に直接的に寄与しておらず、ほかの経路を介している可能性が考えられた。
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