アニマルウェルフェア(以下、AW)に対応した家畜の飼育方式への転換が迫られている。AW対応飼育を客観的に評価するツールとして、OIEが一般生産農場を対象にした国際規約を各畜種で作成、公表した。我が国のAW指針はOIEコードに準拠しているものの、各評価項目でyes/noの二者択一方式であり、AW本来の意味を示す、連続的なバロメーター的評価ができない。また、バロメーター的評価を組み入れた長野県独自の「信州コンフォート畜産認証基準(平成19年度)」は作成から10年以上が経過し、OIEコードとの整合性が不十分である。 そこで本研究では、2011年に提案した改良版信州コンフォート畜産認証基準におけるAW評価法を見直し、2015年に公表されたOIEの陸棲動物衛生規約における「アニマルウェルフェアと乳用牛生産システム」、またIDFが2019年に公表した「IDF Guide to Good Animal Welfare in Dairy Production 2.0」、(公社)畜産技術協会が2021年に改定した「乳用牛 アニマルウェルフェアの実践に向けて」に記載のAWの状態を判断するための有用な指標を参考に、新たな評価法を検討した。 その結果、重複事項、非現実的と思われる事項(とりわけ舎飼い方式において)を削除したものの、評価項目数は以前の65項目に比べて多く、計74項目となった。全評価項目中、①飢え、乾き、栄養不良からの自由に関する項目が17.6%、②恐怖、苦悩からの自由に関する項目が14.9%、③暑熱ストレス、物理的不快さからの自由に関する項目が17.6%、④痛み、怪我、疾病からの自由に関する項目が36.5%、⑤正常な行動を発現する自由に関する項目が13.5%ととなった。 新たな評価法に基づき、2戸の繋ぎ飼い農家で調査した結果、AW総合点はそれぞれ88.8点、85.7点となった。
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