研究実績の概要 |
目的:長野県では国に先駆けて、「信州コンフォート畜産認定」を平成19年に提案し、生産農場におけるAWレベルを数値化した段階評価を試みた。しかし、同基準の提案から既に10年以上が経過しており、WOAH規約等との整合性が不十分である。本研究では、国際規約等を踏まえた評価法に改訂し、その実用性を検証するとともに、その点数に影響する評価項目を抽出した。 方法:当研究室で検討した「信州コンフォート畜産認定基準のAW集約化モデル(森本, 2011)」を再精査し、評価項目内容の重複さや不明瞭さ、実現性の観点から、評価項目を削除した。次いで、関連する他の基準との比較から、前述の集約化モデルに含まれなかった項目を加え、これを改訂版として作成した。そして、作成した改訂版を用いて、繋ぎ飼いシステムを採用する農家5戸、フリーストールシステムを採用する農家5戸でその実用性を検証した。改訂版によるAW総合評価点の農家間差に及ぼす評価項目を抽出するため、ステップワイズ重回帰分析による最適な予測モデルを検討した。 結果:改訂版における評価項目数は、繋ぎ飼いシステムで58項目、フリーストールシステムで64項目となった。改訂版における総合評価点は、繋ぎ飼いシステムが422.5±12.0、フリーストールシステムが431.1±28.3となった。改訂版において、農家間におけるAW充足率に影響を与える項目として、「飢えと渇きからの自由」では8項目(p<0.01)、「恐怖・不快環境からの自由」では7項目(p<0.05)、「不快環境からの自由」では5項目(p<0.01)、「痛み・怪我からの自由」では5項目(p<0.05)、「正常行動発現の自由」では5項目(p<0.01)が抽出された。以上より、本改訂版によるAW評価を行うにあたり、これらの30項目を中心に調査することで、調査がより効率的に行えるものと推察された。
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