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2021 年度 実施状況報告書

血管新生抑制因子によるウシの子宮内膜機能調節とその受胎性への関与

研究課題

研究課題/領域番号 20K06385
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

林 憲悟  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 畜産研究部門, 主任研究員 (70563625)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードトロンボスポンジン / 子宮 / 受胎 / ウシ
研究実績の概要

本研究は、主要な血管新生抑制因子であるトロンボスポンジン(TSP)ファミリーに着目し、TSPに制御されるウシの子宮内膜機能と受胎性との関連を明らかにすることを目的とする。本年度は以下の研究を実施した。
1) 着床期のウシ子宮におけるTSPファミリーのタンパク質発現局在の解析:妊娠19(着床開始)および30日目(着床後)の子宮において、TSPファミリーのリガンド(TSP1およびTSP2)と受容体(CD36およびCD47)のタンパク質発現局在を免疫組織化学により解析した。その結果、これらのタンパク質は子宮内膜の内腔上皮細胞、子宮腺および血管に加え、胚の栄養膜細胞に局在することが明らかとなった。よって、TSPは胚と子宮内膜の相互作用により、着床に伴う子宮内膜の改変や胎盤形成の開始に関与している可能性が示された。
2) リピートブリーダー(RB)牛の子宮内膜におけるTSPファミリーのタンパク質発現局在の解析と血管分布状態の比較::正常に発情周期を回帰するが3回以上人工授精しても不受胎であるRB牛の子宮内膜において、TSPファミリーのタンパク質発現局在を免疫組織化学により解析した。その結果、TSP1、TSP2、CD36、CD47は子宮内膜の内腔上皮細胞および子宮腺上皮細胞に局在することが明らかとなった。これらのタンパク質は子宮内膜の血管にも局在していたが、内腔上皮細胞直下の間質の血管における局在は少ないことが明らかとなった。また、RB牛と非RB牛の子宮内膜において、血管内皮細胞特異的因子であるフォン・ヴィレブランド因子(vWF)の免疫組織化学染色を行い、組織切片あたりの血管数およびvWF陽性染色占有率を比較したところ、RB牛は非RB牛と比較して子宮内膜の血管数が少なく、vWF陽性染色占有率が低いことが明らかとなり、RB牛の子宮内膜では血管新生が抑制状態にあることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

着床期のウシ子宮内膜におけるTSPファミリーの遺伝子発現動態およびタンパク質発現局在を解析することにより、TSPは胚と子宮内膜の相互作用により着床に伴う子宮内膜の改変や胎盤形成の開始に関与している可能性が示された。現在、妊娠に伴う子宮内膜におけるTSPファミリー発現の制御機構を明らかにするため、ウシ生体から採取した子宮内膜の組織培養に胚タンパク質の妊娠認識物質であるインターフェロンタウを添加し、組織中のTSPファミリーの遺伝子発現およびタンパク質濃度の解析を行っている。また、RB牛と正常牛の子宮内膜において、血管新生促進因子およびTSPファミリーの遺伝子発現および血管分布状態を比較することにより、RB牛の子宮内膜では血管新生が抑制状態にあることが示され、子宮内膜における血管系の構築が受胎性と関連している可能性が示された。

今後の研究の推進方策

妊娠早期およびRB牛の子宮内膜におけるTSPファミリーの発現解析により、TSPファミリーがウシの子宮内膜機能や受胎性に関与している可能性が示された。したがって、研究実施計画に従い以下の2つの仮説を検証する。
仮説1「TSPファミリーは胚と子宮細胞間のクロストークにおいて負の機能調節因子である」:TSPは、血管新生抑制作用に加え、アポトーシスや細胞接着の調節等の生理的作用も有する。そこで、妊娠早期の胚と子宮細胞において、TSPファミリーが細胞生存や細胞間接着の負の機能調節因子であることを実証する。ウシ胚の栄養外胚葉細胞に由来する細胞株であるBT-1細胞およびウシ生体から採取した子宮内膜上皮細胞を用いて、TSP1およびTSP2の単独添加またはCD36抗体およびTSP1インヒビターを共添加し、細胞生存性アッセイおよび細胞接着アッセイを行う。
仮説2「ウシ生体の子宮におけるTSPファミリーの抑制処理は受胎率を改善する」:血管新生の抑制状態を解除することで血管新生が起こり易くする状態になることが、胚死滅を防止し妊娠成立に向けた子宮内膜の変化であることを明らかにするため、ウシ生体の子宮内にTSP1インヒビターを非外科的投与し、TSP1の抑制が受胎性に及ぼす影響を検証する。

次年度使用額が生じた理由

国内学会における研究成果公表のための「国内旅費」が未使用となったことにより次年度使用額が生じた。使用計画として、細胞培養実験に必要とされる「細胞培養用試薬および消耗品類」および「生化学実験用試薬および消耗品」に加え、ウシ子宮内投与実験のための「投与試薬および消耗品」に充当する。

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公開日: 2022-12-28  

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