研究課題/領域番号 |
20K06399
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
中牟田 祥子 岩手医科大学, 歯学部, 技術員 (70724532)
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研究分担者 |
中牟田 信明 岩手大学, 農学部, 准教授 (00305822)
二階堂 雅人 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70432010)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 1型鋤鼻受容体 / ハイギョ / 嗅上皮 / 鋤鼻器 / in situ hybridization |
研究実績の概要 |
鋤鼻器を持たない魚の嗅上皮は匂い受容体(OR)、1型鋤鼻受容体(V1R)、2型鋤鼻受容体(V2R)を発現する。魚から四足動物への進化の過程で、ORとV1R /V2Rの発現部位が分かれたことで四足動物の嗅上皮と鋤鼻器が生じたと考えられている。両生類(ツメガエル)の嗅覚器では、V1Rは嗅上皮に発現し、鋤鼻器には発現しない(Date-Ito et al. 2008)。本研究では「魚から四足動物に進化する過程で嗅覚器が陸上生活に適応し鋤鼻器が誕生する際に、 V1R発現部位はどう変化したのか」を明らかにする目的で、魚型嗅上皮(ラメラ嗅上皮)と原始的鋤鼻器(陥凹部上皮)の2種類の感覚上皮を持つハイギョの嗅覚器におけるV1R発現解析を行っている。 2020年度は、4種のアフリカハイギョと1種の南米ハイギョの嗅覚器についてRNA-seq解析を行い、各ハイギョのV1R遺伝子を同定した。さらに、2種のアフリカハイギョ(Protopterus annectensとProtopterus amphibius)について、嗅覚器におけるV1Rのin situ hybridization解析を行い、ラメラ嗅上皮と陥凹部上皮のそれぞれについてV1R発現細胞の密度を算出した。2種類のハイギョのいずれにおいてもV1R発現細胞はラメラ嗅上皮に著しく偏って分布すること、陥凹部上皮に分布するV1R発現細胞は非常に少ないがゼロではないこと、2種のハイギョの間で陥凹部上皮におけるV1R発現細胞密度に差があることが明らかになった。ハイギョの陥凹部上皮は魚型嗅上皮(OR、V1R、V2Rが発現)と両生類の鋤鼻器(ORやV1Rは発現せず、V2Rが発現)の中間型であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間(2020年~2022年度)内に、4種のアフリカハイギョ(プロトプテルス属)と、1種の南米ハイギョ(レピドシレン属)のV1R遺伝子の同定と、嗅覚器におけるV1R発現解析を行う予定である。2020年度には、P.アネクテンスの嗅覚器におけるV1R発現解析と、P.アンフィビウスおよびP.エチオピクスのV1R遺伝子の同定およびクローニングを完了する予定であった。実際には2020年度末までに、上記5種類のハイギョのV1R遺伝子の同定と、P.アネクテンスとP.アンフィビウスの嗅覚器におけるV1R発現解析を完了し、P.エチオピクスの嗅覚器におけるV1R発現解析にも着手している。5種類のハイギョについて、V1R発現解析に必要な組織サンプルは既に入手済みである。全体的にみるとおおむね順調に進展し、最終的には計画通りの実験データを得られる見込みが立っている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度にP.アネクテンスとP.アンフィビウスの嗅覚器におけるV1R発現解析を行い、これら2種類のハイギョの間で陥凹部上皮におけるV1R発現細胞の密度に差があることを見出した。さらに残り3種類のハイギョについて同様のデータを出し、ハイギョ間におけるV1R発現細胞の分布パターンの多様性を明らかにし、その違いを生み出す原因について考察する。 2021年度は、P.エチオピクスの嗅覚器におけるV1R発現解析と、P.ドロイとL.パラドクサのV1R遺伝子のクローニングを行う。また、P.ドロイとL.パラドクサのいずれかについて、嗅覚器における発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で学会がオンライン開催になったため、旅費として計上していた金額分が翌年度に持ち越しとなった。2021年度分の助成金と合算して、研究に必要な物品等の購入に充てるとともに、老朽化している少額の実験機器(光学顕微鏡等)の買い替えに充てる。
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