研究実績の概要 |
多くの四足動物は嗅上皮(OE)と鋤鼻器(VNO)の2種類の嗅覚器を持つ。魚はVNOを持たず、OEにすべての嗅覚受容体が発現している。魚から四足動物への進化の過程で、匂い受容体と鋤鼻受容体の発現部位が分かれて四足動物のOEとVNOが生じたと考えられている。両生類(ツメガエル)の嗅覚器では、1型鋤鼻受容体(V1R)は嗅上皮だけに発現し鋤鼻器には発現しない (Date-Ito et al. 2008)。両生類に最も近い魚であるハイギョの嗅覚器には、OEと原始的なVNO(陥凹部上皮、RecE)が存在するが、OEとRecEの間でV1R発現が分かれているかについては不明であった。我々は2021年度までに、現生肺魚6種のうちアフリカハイギョ3種(Protopterus annectens, P. amphibius, P. aethiopicus)と南米ハイギョ1種(Lepidosiren paradoxa)の計4種について、RNA-seqによりV1R遺伝子を同定し、in situ hybridizationにより発現解析を行った。 最終年度の2022年度はアフリカハイギョP. dolloiについてV1R発現解析を行い、これまでに解析した4種のハイギョ同様、V1R発現細胞の多くはOEに分布するが、わずかだがRecEにも分布することを明らかにした。OEとRecEの間のV1R発現分離が不完全であるという特徴は、現生肺魚のうち少なくともすべてのアフリカ肺魚と南米肺魚で共有された形質であることが明らかになった。
|