研究課題/領域番号 |
20K06403
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
岩丸 祥史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, グループ長補佐 (20355142)
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研究分担者 |
舘野 浩章 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (30450670)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プリオン / スクレイピー / 異常プリオン蛋白質 / 持続感染細胞 / 糖鎖プロファイル / レクチン |
研究実績の概要 |
本研究は、プリオンの主要構成成分である異常プリオン蛋白質の糖鎖構造に着目し、高密度レクチンアレイを用いて異常プリオン蛋白質の糖鎖プロファルを取得し、プリオン株の簡便な識別法の確立と、プリオン株が多様な生物学的性状を示す機構を明らかにすることを目的とする。プリオン株としてマウススクレイピーChandler、 ME7、22L株を用いた。近交系マウスに各プリオン株マウス脳乳剤を脳内接種し、約150日後に病末期のマウス脳を回収した。これらの検体から部分精製した異常プリオン蛋白質を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下で加熱し、脱凝集と同時に不活化を行った。SDS-ポリアクリルアミド電気泳動後、銀染色法で解析し、異常プリオン蛋白質以外のバンドは検出されないことを確認した。蛍光標識した部分精製異常プリオン蛋白質を高密度レクチンアレイに反応させ、エバネッセント蛍光スキャナを用いて糖鎖プロファルを取得した。クラスター解析を行った結果、部分精製異常プリオン蛋白質の糖鎖プロファイルに基づき、プリオン株を識別することに成功した。 続いて、培養細胞で複製された各プリオン株の異常プリオン蛋白質の糖鎖プロファイルの解析を試みた。培養細胞として、マウス視床下部性腺刺激ホルモン放出ホルモン産生細胞株であるGT1-細胞とマウス神経芽腫由来のN2a細胞を用いた。各細胞に、正常マウスとChandlerおよび22L株感染マウス脳由来のミクロソーム画分を暴露し、継代数が一致したプリオン持続感染細胞を新たに作出した。プリオン持続感染細胞をPhosphatidylinositol-Specific Phospholipase C (PIPLC)により処理し、回収された細胞表面のGPIアンカー型蛋白質から異常プリオン蛋白質の部分精製を試みたが、解析に使用可能な収量ならびに精製度に達しないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画した方法では、プリオン持続感染細胞からの異常プリオン蛋白質の部分精製に至っていない。そのため、部分精製法の検討を行っている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
プリオン持続感染細胞を大量に培養し、マウス脳からの異常プリオン蛋白質の部分精製法を適用し、部分精製を試みる。あるいは、細胞を界面活性剤で処理後、密度勾配遠心分離法で異常プリオン蛋白質を濃縮後、部分精製を行う。異常プリオン蛋白質精製度が十分であれば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下で加熱し、脱凝集と同時に不活化を行う。部分精製異常プリオン蛋白質を、蛍光色素(Cy3)と反応させ標識する。蛍光標識した部分精製異常プリオン蛋白質を高密度レクチンアレイに反応させ、糖鎖プロファイリング解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料の作成と解析に遅延が生じているため、次年度使用額が生じた。また、COVID19の発生を受けた渡航制限により、国際学会への参加を見合わせたため、次年度使用額が生じた。細胞の大量培養と異常プリオン蛋白質部分精製に必要な消耗品を購入する。また、国際学会への参加を計画する。
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