研究実績の概要 |
ヘルペスBウイルス(以下、Bウイルス)は、多くのサルに潜伏感染しているウイルスで、ヒトに感染すると重篤な疾患(Bウイルス感染症)を引き起こす。単純ヘルペスウイルス1型、2型(HSV-1,-2)と抗原が類似していることからBウイルス感染症の血清学的診断は困難である。また、感染性Bウイルスは国内で所持されておらず、ウイルスそのものを用いた診断法の研究開発は困難である。本研究はBウイルスの外套タンパク質を被った水疱性口炎ウイルス(VSV)シュードタイプを作製するというアプローチからこれらの課題の解決を目指す。これまで Bウイルスの外套タンパク質(gD, gB, gH, gL)を哺乳細胞発現ベクターにクローニングし、発現を確認してきた。令和3年度は、これらを用いてVSVシュードタイプの作製を試みたが感染性のあるVSVシュードタイプは作出できなかった。最近の報告(Hilterbrand et al, mBio, 2021)によると、ヘルペスウイルスの外套タンパク質を被ったVSVシュードタイプは特殊な細胞(受容体Nectin-1をstableに発現させたマウスメラノーマ細胞)にしか感染せず、感染過程もHSV-1そのものとは大きく異なる。このため、HSV-1に近縁のBウイルスの場合も、感染性の解析にはVSVシュードタイプは適さない可能性がある。本研究では、VSVシュードタイプの系が予定通りに進まなかった場合、外套タンパク質に対するモノクローナル抗体を用いた競合ELISAの開発を研究計画に取り入れている。令和3年度はモノクローナル抗体の作製のため、外套タンパク質の発現、精製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Bウイルスの外套タンパク質(gD, gB, gH, gL)を用いてVSVシュードタイプの作製を試みたが感染性のあるVSVシュードタイプは作出できなかった。一方、外套タンパク質(gG, gC およびgD)の発現と精製に成功しており、今後、これらをマウスに免疫し、モノクローナル抗体の作製に着手する予定である。
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