研究課題/領域番号 |
20K06405
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
高濱 正吉 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, プロジェクト研究員 (60510287)
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研究分担者 |
山本 拓也 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 免疫老化プロジェクト, プロジェクトリーダー (60752368)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 免疫老化 / Influenza / Fc受容体依存的免疫応答 / 広範囲HA中和抗体 / ハイパラメーターフローサイトメーター / non-human primate |
研究実績の概要 |
高齢者では季節性インフルエンザワクチンの効果が減弱することが知られており、高齢者においても有効なワクチンの開発は、急速に高齢化の進む本邦における急務の課題である。本研究課題では、インフルエンザウイルスに対する抗体の定常領域 Fcを介したFc受容体(FcRs)依存的免疫応答を介する感染防御効果に着目し、まず、カニクイザルにおけるFcRs依存的免疫応答の新たな解析系を樹立することを目的としている。その上で、インフルエンザワクチンを投与した若齢及び高齢ザル由来血清を用いて、誘導される抗体のFcRs依存的免疫応答についての検証を行い、免疫老化を考慮した次世代型インフルエンザワクチン開発の基盤構築を目指している。 本年度は、抗HA抗体のFcRs依存的応答を簡便に解析するためのスクリーニング系の準備として、HA発現標的細胞株ライブラリの樹立と広範囲HA中和モノクローナル抗体のカニクイザル型IgG1野生型、及びFcRs結合親和性を増強あるいは欠失した各変異体の作製に着手した。これまでに、亜型の異なる3種類のHA安定発現細胞株を樹立し、純化しており、引き続きHA亜型ライブラリを増やして行く。また、FcRs依存的免疫応答の評価系を確立するために、各カニクイザル型Fc変異体抗体精製と標的細胞表面HA、及びFcRs発現細胞表面のFcRsに対する結合能の評価を進めており、次年度以降に計画している若齢・高齢サルへのワクチン後の、FcRs依存的応答の網羅的評価プラットフォームの準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
標的細胞株ライブラリの樹立は、肺上皮由来のA549細胞株をNK障害耐性かつluciferase安定発現株としたA549-NKR-lucを親株として、ここに各インフルエンザ亜型由来HAを発現させることで行った。既に樹立していたA549-NKR-lucに各HAを発現させ、薬剤選択とソーティングによりHA発現量の揃った安定発現株ライブラリの作製を行った。これまでに、H1N1、H3N2、H7N9由来の各HA安定発現A549-NKR細胞株を樹立し、純化した。 また、広範囲HA中和モノクローナル抗体であるFI-6の抗HAヒト型IgG1抗体のコンストラクトから、カニクイザル型IgG1への変換を行い、カニクイザル型IgG1がヒト型と同様に標的細胞表面のHAを認識することを確認した。さらに、このカニクイザルIgG1を鋳型として、ヒト及びマウスでFc受容体結合能が増強することが知られているGASDALIE変異体(Bournazos et al, Cell, 2014)、及び、Fc受容体結合能を欠失することが知られているGRLR、LALA変異体についてもカニクイザル型を作製し、FI6と同様にHAを認識できることを確認した。現在、FcRsとの結合への影響について確認を進めている。また、これらの抗体の精製についても、機能的カニクイザル型IgGをExpi293T細胞で作製・定量する系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、標的細胞株としては、引き続きHA亜型ライブラリを樹立、純化を進める。また、CD16発現レポーター細胞株及び、先行して樹立しているH1N1株由来HA安定発現A549-NKR-lucを標的細胞モデルとして、作製した各カニクイザルIgG1変異体及びHAワクチン投与カニクイザル血清の評価を行う。さらに、PBMC中の多様なFcRs発現免疫担当細胞サブセットの単一パネルでの網羅的FcRs発現評価・活性化評価を行うために、3種類のFcRsの発現と各サブセットの活性化状態を同時に評価できる統合パネルの樹立を進め、若齢・高齢サルへのワクチン投与後のFcR依存的免疫応答の評価系の準備を進める。
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