研究課題/領域番号 |
20K06409
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
椎名 貴彦 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (90362178)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 食道 / 横紋筋 / 迷走神経 |
研究実績の概要 |
ほ乳類の食道筋層は、口に近い部分が横紋筋で胃に近い部分が平滑筋で構成されているか、もしくは全長に渡って横紋筋で構成されている。これは、小腸や大腸といった他の消化管の筋層が平滑筋で構成されているのとは異なった、食道に独特の特徴である。食道横紋筋の機能を解明することで、食道梗塞や巨大食道症といった食道特有の運動疾患の解決に向けて有効な情報を得られると考えられる。本研究の目的は、蠕動運動の基盤となる食道横紋筋の弛緩(収縮の抑制)あるいは収縮反応に対する調節機構を解明することである。具体的には、食道内腔の食物に由来する物理的あるいは化学的因子に基づき、食道横紋筋がいかに運動を調節されるかを明らかにすることを目指す。 2020年度は、摂取した食物由来の物理的化学的因子として、温度、浸透圧、pH、伸展(食物の量)などによって食道横紋筋運動が変化するか(食道横紋筋が収縮するか弛緩するか)を明らかにするための実験を行なった。中枢を介さない末梢(局所)レベルでの応答を検討するためには、ラットから食道を摘出してルガンバスにセットし、in vitroで食道運動を記録、解析した。オルガンバス内の温度を変化させたところ、食道横紋筋の反応が温度変化に応じて増強または抑制すること、具体的には、温度を体温に近い状態から徐々に低下させた際に反応が増強するということが明らかとなった。また、この変化に温度感受性イオンチャネルとして知られているTRPファミリーが関与しているかどうかを検討した。得られた成果は、食道横紋筋運動における、特に末梢性の制御機構を解明する上で重要な知見といえる。さらに、中枢も含めた応答を検索するためには、中枢を含む丸ごと動物を用いたin vivo実験系を確立した。今後、in vivoで食道蠕動運動を評価することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の計画は、摂取した食物由来の物理的化学的因子として、温度、浸透圧、pH、伸展(食物の量)などによって食道横紋筋運動が変化するか(食道横紋筋が収縮するか弛緩するか)を明らかにすることであった。このうち、in vitro実験系を用いて、温度変化が食道運動に与える影響を明らかにした。また、中枢を含む丸ごと動物を用いたin vivo実験系を確立し、in vivoで食道蠕動運動を評価することが今後可能となった。以上のことから、概ね計画通りに研究は進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、前年度の成果を踏まえて、食道横紋筋運動に影響すると考えられる食物由来の物理的化学的因子が作用する機構についてさらに検討する。温度に加えて、浸透圧やpH、伸展(食物の量)といった物理化学的刺激が食道横紋筋運動の制御に関与するかどうかを明らかにすることを目指す。オルガンバス内の浸透圧、pH等を変化させる、あるいは、食道内腔へ伸展刺激を付加することで、食道横紋筋の反応がどのように変化(増強または抑制)するのかを調べる。明らかにした変化にどのような情報伝達物質が関わるのか、薬理学的に解析する。 また、前年度に確立したin vivo実験系を用いて、中枢も含めた食道蠕動運動の制御機構と、それに対する食物由来の物理的化学的因子の影響を解明する。
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