研究課題
研究最終年度は、脂肪分化の前後で発現する糖鎖(コンドロイチン硫酸: CS)に関して次の解析をし、以下の結果を得た。①脂肪前駆細胞3T3-L1を脂肪細胞へ分化させたところ、培養環境中のCSの量が分化前と比較して約5分の1に減少した。また、高速液体クロマトグラフィーによる測定でも、構成する種やそれらの割合が変化した。例えば、分化前は、CS-O、iO、A、iA、iEから構成されていたCS種は、分化後はCS-A、iA、iEのみを検出し、CS-OやiOは検出限界以下となった。さらには、分化後の平均糖鎖長が、分化前と比較して有意に短くなっていた。以上より、脂肪細胞への分化進行にともない、脂肪細胞を取り巻くCSの質的・量的変化が起きていることを明らかにした。②脂肪細胞のCS糖鎖の伸長や合成、および分解に与る酵素遺伝子の分化前後の発現量をリアルタイムPCR法で検索、比較した。その結果、CSの糖鎖長や糖鎖種、さらには量の増減に呼応するように、検索対象とした遺伝子の一部で、その発現量が大きく変化していた。本研究では、脂肪細胞への分化とCSの質的・量的変化の関連、すなわち、脂肪細胞の分化進行に伴うCS糖鎖の量の減少や、構成するCSの種類の減少、および平均鎖長の短化を初めて確認、報告した。これらのことは、細胞外マトリクスとして存在・分布するCSが、その質と量を変化させることで、脂肪細胞の分化を制御していることを意味する。ただし脂肪細胞分化制御の詳細な調整メカニズムの解明は課題として残った。今後、本メカニズムの詳細な解明を行い、脂肪量の制御を目指したい。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 25 ページ: 811-818
10.1093/bbb/zbac057