研究実績の概要 |
昨年度の研究成果から,鉄過剰肝では,小葉中心部(Zone 3)を傷害する四塩化炭素誘発肝障害に対してアポトーシスの抑制と関連して肝障害の軽減が,小葉辺縁部(Zone 1)を傷害するアリルアルコール誘発肝障害に対して酸化ストレスの亢進による肝障害の増悪が起こることが示され,肝小葉のZone特異的な肝障害修飾機構が存在する可能性が示された。この肝障害の修飾機構を調べるために,細胞保護に関わる転写因子Nrf2とその標的遺伝子の発現を解析した。鉄過剰肝では,肝毒性化合物の投与の有無に拘らず,核内のNrf2発現量が増加傾向にあった。また,鉄過剰肝では, DNA修復(Rad51, Cdkn1a, Xrcc3),アポトーシス(Ark1b10),酸化ストレス反応(Hmox1),異物代謝(Aldh1a1, Cyp1b1, Gsta3, Gstm3, Abcg2),脂質代謝(Scd, Mthfd2, Fgf21, Pparg, G6pd)に関わる40種以上のNrf2標的遺伝子の発現変動が認められた。これらの遺伝子のうち,Rad51, Ark1b10, Aldh1a1, Gsta3, Abcg2, Scd, Pparg, G6pdはZone 3で発現上昇,Cdkn1a, Cyp1b1, Hmox1はZone 3で発現低下,Gstm3, Xrcc3, Mthfd2, Fgf21はZone 1で発現上昇を示し,鉄過剰によるZone特異的な肝障害修飾機構にNrf2とその関連遺伝子の変化が関わる可能性が示された。
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