研究課題/領域番号 |
20K06416
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
寺岡 宏樹 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50222146)
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研究分担者 |
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 教授 (50244679)
小林 麻己人 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50254941)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / in vivo / スクリーニング系 / 動物実験代替法 / シトクロームP450 / 代謝的活性化 |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュに、ヒトのシトクロームP450分子種(hCYPs)を発現させることにより、種差を克服し、より、精度の高いin vivoスクリーニング系を開発することを目的として、初年度はF0モデルを中心に検討した。
アクチンプロモーターを含むtol2ベクターににhCYP1A1、3A4、3A7とEGFPをつなげてセブラフィッシュ初期胚胚に注入したところ、受精後24 hr(hpf)までにEGFP蛍光を確認できた。しかし、hCYP2E1については大腸菌の生育を妨げるようであり、tol2ベクターを作成できなかった。対照胚稚魚(野生型)には影響しない濃度のベンツピレンを、前述3種のhCYPs発現稚魚に投与したところ、半数以上で顕著な浮腫を起こした。また、サリドマイドは対照胚稚魚やhCYP1A1発現胚稚魚には影響せずに、活性代謝産物が報告されているhCYP3A4、3A7発現胚稚魚に胸鰭欠損を含む発生毒性を生じさせた。3種のhCYPs発現胚稚魚を成魚まで育ててペアリングし、EGFP蛍光を発する胚稚魚(TGフィッシュ)を探索したが、半数以上が死亡した。わずかながらhCYP3A7の陽性TGフィッシュ(F1)も得られたが、EGFP蛍光が弱く、サリドマイド感受性も示さなかった。
hCYP1A1、3A4、3A5を発現するF0モデルを作出し、これまで代謝産物の毒性が報告されている化合物について発生毒性を検出することができた。しかし、TGフィッシュを確立については今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)アクチンプロモーターにhCYP1A1、3A4、3A7とEGFPをつなげたプラスミドを作成してセブラフィッシュ胚に注入したところ、受精後24 hr(hpf)までにEGFP蛍光を確認できた。しかし、hCYP2E1については大腸菌の生育を妨げるようであり、tol2ベクターを作成できなかった。 2)特異的蛍光基質が知られているhCYP1A1についてはCYP活性をin vivoで確認できた。 3)対照胚稚魚(野生型)には影響しない濃度のベンツピレンを、前述3種のhCYPs発現稚魚に投与したところ、半数以上で顕著な浮腫を起こした。なお、これらのhCYPsで代謝的活性化が報告されていないアセトアミノフェンの毒性は認められなかった。 4)アフラトキシンB1は代謝的活性化が報告されていないhCYP1A1を除いて、hCYP3A4および3A7発現胚稚魚で浮腫、尾部の湾曲および致死を起こした。 5)サリドマイドは対照胚稚魚やhCYP1A1発現胚稚魚には影響せずに、hCYP3A4、3A7発現胚稚魚に胸鰭欠損を含む発生毒性を生じさせた。 6)3種のhCYPs発現胚稚魚を成魚まで育ててペアリングし、EGFP蛍光を発する胚稚魚(TGフィッシュ)を探索したが、半数以上が死亡した。わずかながらhCYP3A7の陽性TGフィッシュ(F1)も得られたが、EGFP蛍光が弱く、サリドマイド感受性を示さなかった。
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今後の研究の推進方策 |
hCYPsを注入したF0胚稚魚のEFGP蛍光はゼブラフィッシュの特性としてモザイク状であった。しかし、アクチンプロモーターを用いたTGフィッシュは発生初期から全身にhCYPsを大量に発現するために致死率が非常に高く、低発現胚稚魚が生存したと考えられた。そこで、hsp70プロモーターに代えたhCYP発現胚稚魚を成魚まで育てたのち、TGフィッシュを作成し、代謝活性と毒性を検討する。劇的な形態変化が起こる受精後24 hrまでが高感受性と考えられたので、それ以降に加温することでCYPs発現の影響を回避する。また初年度できなかった、3種以外のhCYPsとプロスタグランジンHシンターゼ発現稚魚も作成する。大腸菌の生育を妨げるhCYP2E1の代わりに、ラットのCYPE2(rCYPE2)を発現させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席を予定していた学会が遠隔開催に切り替わったため、旅費を使用することがなかった。2021年度も多くの関連学会が対面開催を見送っていることもあり、プライマー購入など消耗品費にあてるつもりである。
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