研究実績の概要 |
1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine(MPTP)をマウスの腹腔内に投与することで作出したパーキンソン病モデルマウス(PDマウス)へのBifidobacterium breve strain A1 [MCC1274](B. breve A1)の4日間の経口投与は、PDマウスの海馬の記憶消去機能の異常亢進をcontrolマウスのレベルにまで回復することが明らかとなった。一方、B. breve A1を熱処理した死菌B. breve A1にはそのような改善効果が認められかったことから、消化管内で生存しているB. breve A1が脳-腸-微生物相関を介して脳に作用し、PDマウスの認知機能を改善することが明らかとなった。その際、B. breve A1は、PDマウスの海馬神経におけるsynaptophysin やPSD-95などのシナプスタンパク質のmRNA発現量の低下を回復し、CA1領域の神経樹状突起上のスパイン密度の低下をコントロールレベルにまで回復・正常化した。一方、海馬シナプスの神経可塑性を調節する代表的なセリンプロテアーゼであるneuropsinのmRNA発現量ならびにそのタンパク質発現量は、その両者がPDマウス海馬で有意に増加した。それに対して、B. breve A1は、PDマウス海馬で亢進したneuropsinのmRNA発現ならびにタンパク質発現における両者の発現誘導をコントロールレベルにまで回復・正常化した。これらの結果から、B. breve A1はPDマウスの海馬で異常亢進したneuropsinの発現誘導を正常レベルにまで回復させることで、海馬の神経可塑性を正常化し、亢進した記憶の消去機能を改善・回復させることが明らかとなった。
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