研究課題/領域番号 |
20K06425
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
石井 利明 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50264809)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | B. breve A1 [MCC1274] / MPTP / パーキンソン病 / 難治生認知障害 / 記憶消去 / 脳-腸-微生物相関 / 海馬 / neuropsin |
研究実績の概要 |
MPTPをマウス腹腔内に投与することで作出したパーキンソン病モデルマウス(PDマウス)に、Bifidobacterium breve strain A1 [MCC1274] (B. breve A1) を経口投与すると、PDマウスが示す海馬記憶の異常な消去亢進をcontrolマウスのレベルにまで回復させた。その際、B. breve A1は、PDマウス海馬で亢進したneuropsinのmRNAならびにそのタンパク質発現を正常化することで、シナプスタンパク質発現量とCA1領域の神経樹状突起上のスパイン密度を正常化した。本年度は、PDマウス海馬でneuropsinの発現誘導が異常に亢進する機構を解明することを目的に研究を進めた。その結果、PDマウス海馬では細胞接着依存性の生存シグナルとして機能するintegrin-linked kinase (ILK)のmRNA発現の低下がneuropsinのmRNA発現誘導の亢進に先行して生じる知見を得た。これらの結果は、PDマウス海馬ではILK発現量の低下が起こり、海馬神経細胞内のILKシグナルを減弱化し、ILKシグナルの下流に位置するneuropsinの発現誘導を異常な亢進へと導く可能性を示唆している。また、neuropsinとILKのmRNA発現誘導は、恐怖条件付け学習の有る無しで大きく変化することから、両者は共に海馬神経の可塑性に重要な役割を果たしていることが示された。さらに、B. breve A1が海馬GABA神経の活動に与える影響を調べる予備的研究から、GABA-A受容体拮抗薬のpentylentetrazoleはneuropsinのmRNA発現誘導を低下させ不随意運動を亢進させたが、B. breve A1はそれらの作用を阻害したことから(特許出願予定)、B. breve A1の作用機構にGABA神経が関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特段問題なく計画通り順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ILKならびにneuropsinの両者は神経可塑性に重要な役割を果たしているため、文脈的恐怖条件付け学習を負荷しない条件下で、controlならびにPDマウスにB. breve A1を経口投与し、その場合に認められるILKとneuropsinのmRNA発現誘導に対する作用を調べることで、B. breve A1がPDマウス海馬で亢進したneuropsinの異常な発現誘導を回復・正常化する作用機構を解明する。また、海馬記憶の消去機能は海馬GABA神経の活動に大きく影響を受けるため、controlならびにPDマウスにGABA-A受容体の非競合的拮抗薬であるpentylenetetrazoleを投与した場合に認められるB. breve A1の海馬消去機能に対する効果と、同時にLKならびにneuropsinのmRNA発現誘導をさらに詳細に解析することで、B. breve A1の認知障害改善効果にGABA-A受容体が関与するか否かについて調べる。
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