研究実績の概要 |
ミツバチのノゼマ病は成蜂に消化系障害を起こし、養蜂群の弱体化や崩壊を招く獣医学上重要な家畜感染症である。本病の原因種としてノゼマ科のNosema apis、N. ceranae、N. neumaniの3種が知られているが、東北地方のミツバチ類から、これら3種とは別種と考えられるNosema sp.が世界で初めて発見された。そこで本研究では、1. Nosema sp.の分子学的および形態学的な同定、2. 日本国内のミツバチ類におけるNosema sp.感染状況、3.Nosema sp.のミツバチ類に対する病原性, の解明を目的とする。2023年度は3.を明らかにするための実験を行った。わが国土着のミツバチであるニホンミツバチ(Apis ceranae japonica)においてはノゼマ種による病原性が明らかになっていないことから、既存種N. ceranaeによる実験感染を行い病理組織学的に解析した。すなわち、ニホンミツバチ20匹にN. ceranaeの胞子spore125,000個を経口的に接種し、感染2日後の剖検により直腸内容物に多数のsporeが確認されたミツバチ1匹についてsporeの形態を電子顕微鏡(TEM)で観察するとともに、中腸組織切片のHE染色像を観察した。その結果、sporeは卵形,5X2μm,Nosema属のsporeの形態的特徴を示した。また、組織学的に中腸上皮細胞に様々な発育段階のNosema虫体が観察され、ニホンミツバチはN. ceranaeの発育に好適であると考えられた。
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