研究課題/領域番号 |
20K06433
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
馬場 健司 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (90452367)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 犬 / 胆嚢粘液嚢腫 / CFTR / 遺伝子多型 |
研究実績の概要 |
胆嚢粘液嚢腫、胆嚢炎、および胆石症の罹患犬(合計60頭)における嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator: CFTR)遺伝子の全エクソンシーケンス解析を行なった。その結果、6種類のアミノ酸置換をともなう変異を同定し、そのうち3種類はこれまでに報告のない今回新たに同定された変異であった。また、当初より着目していた2種類のCFTR遺伝子多型の保有状況をジェノタイピングアッセイにより調査した結果、胆嚢粘液嚢腫罹患犬と胆嚢に胆泥症以外の明らかな異常が認められなかった犬の間で、そのアレル頻度に有意差は認められなかった。しかし、犬種別に解析した結果、チワワにおいては胆嚢粘液嚢腫罹患犬において変異型のアレル頻度が有意に高いことが明らかになった。また、変異型CFTRの機能を解析するため、培養上皮細胞に野生型および変異型CFTR-GFP融合遺伝子を導入し、安定発現細胞を作製した。この細胞を3次元培養し、スフェロイドを形成させたところ、CFTRの頂端部側への局在が確認された。さらに、このスフェロイドにCFTRの刺激剤であるホルスコリンを添加した結果、野生型CFTR発現細胞ではスフェロイドの膨張が認められたが、ある種の変異型CFTR発現細胞では膨張は認められなかった。このことから、今回検討した変異型CFTRでは、陰イオン輸送能が低下していることが示唆された。ここまでに得られた結果からは、CFTR遺伝子多型が犬の肝臓・胆管疾患の発症因子となっているかは不明であるが、その解明には同定されたもののまだ検討できていない4種類の遺伝子多型についても解析することが必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養細胞を用いたCFTR機能解析系の構築に想定以上の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
同定した6種類の遺伝子多型のうち、当初より着目していた2種類の多型については症例における保有状況の解析を終えたが、残り4種類については次年度に実施する。また、培養細胞を用いたCFTR機能解析系を確立できたため、残り4種類の変異型CFTRについても機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行が遅延した結果、予定していた学会発表が行えなかったため、その分の費用が余剰となった。繰越金は、翌年度の成果発表の費用に充当する。
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