研究課題
ヒトには数多くの薬物代謝酵素が存在し、酵素機能や発現の違いが薬効・毒性の性差、年齢差、個体差や人種差、さらに病態における薬物代謝の変化をもたらす要因となることが知られている。一方、多くの動物種では主要な酵素の同定すら不十分な状況であり、薬物代謝の研究が進んでいないため、本研究では主要な薬物代謝酵素を同定し、発現や機能の解析を進めている。これまでイヌやブタ、ネコ、ツパイのチトクロムP450(CYP)やUDPグルクロン酸転移酵素(UGT)、フラビン含有モノオキシゲナーゼ(FMO)、グルタチオン S-転移酵素(GST)、N-アセチル化転移酵素(NAT)、硫酸転移酵素(SULT)について解析を行ってきたが、本年度は未同定のCYP分子種について配列や遺伝子・ゲノム構造、組織発現を調べ、リコンビナント・タンパクを調製しヒトCYP基質に対する代謝機能を解析した。その結果、多くのCYP分子種が対応するヒトCYPに高い配列相同性、よく似た遺伝子・ゲノム構造、組織発現パターン、代謝機能を示したが、一部で組織発現や代謝機能の違いが認められた。とくに、新規に同定したイヌCYP2C94は重要なヒトCYP2C分子種に高い相同性を有し、肝臓で発現し代謝機能を示す、イヌで重要な酵素であった。またウイルス研究のモデル動物種であるツパイについて薬物代謝に重要なCYP1、CYP2A、CYP2B、CYP3Aを解析したところ、薬物代謝に重要な肝臓や小腸、腎臓で発現し代謝機能を有し、ツパイがヒトによく似たCYPの特徴を有することが示唆された。これらの成果は、2022年度の日本獣医学会や日本薬物動態学会、日本薬学会で発表し、6報の原著論文として発表した。今後も、主要な薬物代謝酵素とその機能を明らかにすることにより、様々な動物種で薬物代謝研究の基盤を構築できるものと期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (4件)
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