研究課題/領域番号 |
20K06436
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
平山 博樹 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (60390861)
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研究分担者 |
澤井 健 岩手大学, 農学部, 教授 (90390864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウシ / AMH / 卵巣 / 卵胞 / 子宮内膜 |
研究実績の概要 |
ウシの組織内AMH濃度を測定したところ、卵巣皮質(36.8±20.5 ng/g組織)のAMH濃度が黄体(4.6±4.3 ng/g組織)、子宮内膜丘阜(1.1±1.4 ng/g組織)および子宮内膜丘阜間(0.8±0.4 ng/g組織)に比較して有意に高い値を示した。また、黄体も子宮内膜丘阜および子宮内膜丘阜間部に比較して有意に高い濃度を示した。これまで、卵巣内の顆粒層細胞 から分泌されたAMHが血中に放出され、組織中のAMH濃度は血中AMH濃度と平衡になると推定されてきた。卵胞液中のAMH濃度(数百ng/ml)に比較して血中AMH濃度は1000分の1程度であることから、組織内AMH濃度は数百pg/g組織程度と推測されてきた。本研究は、黄体組織内に高濃度のAMHが含まれることを初めて明らかにした。また、子宮内膜組織内には、血中と同程度もしくはそれをやや超える濃度のAMHが存在することを明らかにした。次に黄体組織におけるAMHおよびAMH特異的受容体(AMHR2)の局在を免疫組織化学により解析したところ、いずれの黄体周期においてもAMHとAMHR2が黄体細胞に共局在することを明らかにした。黄体におけるAMH発現は発情周期の影響を受けずに一定であった。一方で、AMHR2の発現は黄体中期に有意に増加した。これらの結果から、黄体機能の制御においてAMHシグナルが果たす役割を解明する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の蔓延により、入構制限や学外施設への立ち入り制限により研究活動が厳しく制限された。また、世界的なウイルス検査の実施により、遺伝子発現解析に使用する消耗品の購入が困難となった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、これまで知られていた卵胞内の細胞以外においてもAMHが生理的機能を有することが示唆されている。本年度は、卵巣、黄体および子宮内膜におけるAMHシグナルの関係を調査するとともに、発情周期との関係を解析する。さらに、細胞培養や組織培養技術を利用して、黄体細胞や子宮内膜細胞の機能制御におけるAMHの役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の蔓延により、学内への入構制限やサンプル採取のための学外施設への立ち入りが制限された。濃厚接触者に指定され研究活動ができない期間もあった。さらに、研究用のプラスチック製品などの不足から、調達できない物品や納期の遅れが頻発した。これらの理由から研究の進行に遅れが生じたため、次年度使用額が発生した。次年度はCOVID-19を原因とする様々な制限も緩和されると予想され、遅延していた研究を推進するために予算を使用する計画である。
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