AMHは卵巣の顆粒層細胞で産生されることが知られている。本研究では、牛におけるAMHの新たな役割を明らかにすることを目的に、卵巣以外の生殖関連組織におけるAMH濃度を測定した。その結果、卵巣皮質(36.8±20.5 ng/g組織)に比較すると有意に低いものの、黄体(4.6±4.3 ng/g組織)においても比較的高いAMH濃度が検出された。また、子宮内膜丘阜(1.1±1.4 ng/g組織)および子宮内膜丘阜間(0.8±0.4 ng/g組織)においてもAMHが検出され、血中と同程度もしくはそれをやや超える濃度のAMHが存在することを明らかにした。 黄体組織では、いずれの黄体周期においてもAMHとAMHR2が黄体細胞に共局在することが確認された。受容体への結合活性を有するAMHのC末端領域ペプチドは、黄体の形成期に比較して中期、後期および退行期に有意に増加することを見いだした。また、AMHR2の発現は黄体中期に有意に増加した。これらの結果から、黄体機能の制御においてAMHシグナルが関与することが示唆され、培養細胞を用いたAMHの機能解析を進めている。 子宮内膜丘阜および丘阜間部で検出されたAMHのC末端領域ペプチド量およびN末端領域ペプチド量は、卵巣皮質におけるペプチド量と有意な相関を示した(r = 0.701-0.866)。これらのことから、卵巣由来のAMHが内分泌学的機構によって子宮内膜におけるAMH量を制御している可能性が示された。また、切断されたAMHのペプチド量が発情周期に伴い変動することが示された。血中AMH濃度は個体差が大きいことから、子宮内膜におけるAMHシグナルの活性も個体ごとに異なることが推測される。そこで、培養子宮内膜細胞を用いてAMHが子宮内膜機能制御に果たす役割の解析を進めている。
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