研究課題/領域番号 |
20K06442
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平舘 裕希 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (20649157)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 雄性不妊 / ゲノム編集 / CRISPR / ノックアウトモデル |
研究実績の概要 |
本研究ではゲノム編集により作製したノックアウトマウスの表現型から判明した妊孕性の維持に必要な遺伝子、Axdnd1の機能の解析を進めている。今年度はマウスAXDND1に対して作製したウサギポリクローナル抗体を使用し、その局在を明らかにすべく免疫染色を行った。その結果、AXDND1はパキテン期精母細胞から円形精子細胞ステップ 7ないし8の時期にかけて発現し、以降は消失することが明らかとなった。さらに、PAS染色による精巣切片の観察により、ノックアウトマウスでは精細胞の伸長時期に頭部形態の異常が生じ、放出時には著しく細胞数が減少することが判明した。さらにTUNEL染色によりアポトーシスが頻発していることを明らかにした。詳細に検討するため精細胞を単離し、α tubulin抗体で免疫染色を行い野生型と比較したところ、伸長時に一過的に形成されるマンシェットの形態に異常が観察された。マンシェット構造はチューブリン等の細胞骨格により形成され、鞭毛構造の形成に必要なタンパク群の輸送を担うと考えられており、この破綻が観察されたことはAXDND1がマンシェットを構成するタンパク群の発現、配向に関与したことを示唆する。しかしながら先述のように免疫染色の結果に依れば、AXDND1の発現はマンシェット形成時には既に消失していることから間接的に制御が行われている可能性も考えられ、その因果関係は検討課題である。続いてAXDND1のパートナーとなるタンパクを探索すべく、抗体による共免疫沈降を試みたが明確な相互作用因子は補足されず、引き続き探索を続けている。以上までの結果を日本生殖医学会の学会誌であるReproductive Medicine and Biology誌に投稿し、修正ののち受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに得られた結果を査読付き学術誌に投稿し受理された。成果を発信する意味でも一つの区切りを達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展とともに明らかになってきた問題点として、全長クローニングが困難であることが挙げられる。大腸菌株を変更する等の対策を行ったが、現在のところ打開できていない。部分発現させることは可能で、実際にそのリコンビナントタンパクを抗原とした抗体を得ることもできてはいるが、共免疫沈降では明確な結果は得られていない。GSTタグを付加したプルダウンアッセイでもこの領域と相互作用するタンパクは同定されなかった。他の部分を抗原として再び免疫し異なるエピトープを認識する抗体を得て再度共免疫沈降を行うか、あるいは全長を網羅する形で断片的に部分発現させ、それぞれプルダウンアッセイを行うことも考えられるが、前者の方が現実的であろうと考えている。表現型までの結果で査読付き雑誌へ論文発表を行うことができたことから、本研究計画において一定の成果は出すことができたと考えているものの、先に述べたようにAXDND1の消失が不完全な精子完成をもたらす機構については未解明であることから、今後重点的に検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延により海外学会への参加を見送ったため。本年度状況が変化する可能性があるので繰り越す。
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