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2020 年度 実施状況報告書

精子幹細胞における酸素代謝制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06445
研究機関京都大学

研究代表者

森本 裕子  京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (90540097)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード活性酸素 / 酸素応答
研究実績の概要

幹細胞は嫌気性環境に存在し、活性酸素(Reactive Oxygen Species, ROS)の増加は幹細胞機能に悪影響を与えるとされている。我々は以前自己複製分裂にはNox1が産生するROSが必須である事を見いだした。精子幹細胞の酸素・代謝制御機構は他の幹細胞と異なっていると考えられる。しかし精子幹細胞がどのように酸素レベルを感知し、ROSの量を維持しているのかについては未解明である。本研究では精子幹細胞における酸素レベルの感知機構、産生制御、酸素レベルが代謝に及ぼすメカニズムを解明する。
令和2年度は(1)精子幹細胞の酸素応答機構の解析(2)精子幹細胞のROS産生機構の解明(3)酸素応答で制御される標的遺伝子の機能同定(4)酸素応答と代謝制御に関わるHif1a及びc-Mycの解析について研究を行った。その結果、Nox1遺伝子を欠損した未分化な精原細胞において低酸素応答と代謝制御に関わるHif1a遺伝子の発現が減少している事がわかった。また、低酸素においてHif1a遺伝子によってc-Myc遺伝子の活性化とCdkn1a遺伝子の発現抑制が起こっていても細胞の増殖が減少する事がわかった。低酸素においてNox1やHif1a欠損の精子幹細胞の増殖が減少するが、Cdkn1a遺伝子の発現を除く事によって細胞の増殖が回復した。Cdkn1a遺伝子の欠損した精子幹細胞は低酸素状態ではよく増殖するが、通常の酸素濃度ではあまり増えない事がわかった。薬剤によってミトコンドリア由来のROSを抑えたり、ミトコンドリア特異的トポイソメラーゼのTop1mtを欠損しても精子幹細胞には大きな影響をあたえなかった。ミトコンドリア由来のROSよりもNox1由来のROSの方が重要な役割を果たしていると考えられる。これらの結果からROSの由来と酸素応答のバランスが精子幹細胞の自己複製には重要であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和2年度は(1)精子幹細胞の酸素応答機構の解析(2)精子幹細胞のROS産生機構の解明(3)酸素応答で制御される標的遺伝子の機能同定(4)酸素応答と代謝制御に関わるHif1a及びc-Mycの解析について研究を行った。その結果をまとめて以下の論文に発表した。An interplay of NOX1-derived ROS and oxygen determines the spermatogonial stem cell self-renewal efficiency under hypoxia.Genes Dev. 2021 Feb 1;35(3-4):250-260.
doi: 10.1101/gad.339903.120. Epub 2021 Jan 14.

今後の研究の推進方策

今後は計画通りに(1) 精子幹細胞のROS産生機構の解明(2)酸素応答で制御される標的遺伝子の機能的同定(a) レンチウイルスによる機能的スクリーニング(b)精子幹細胞の自己複製制御因子に対するNox遺伝子群の影響の解析の研究を行う。(3)酸素応答と代謝制御に関わるHif1a及びc-Mycの解析に関しては令和2年度の研究で明らかになった為行わない。

次年度使用額が生じた理由

海外に発注した試薬が新型コロナウィルスの影響で遅れが生じた為。今年度からは、使用することがわかった時点で早めに発註する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)

  • [雑誌論文] An interplay of NOX1-derived ROS and oxygen determines the spermatogonial stem cell self-renewal efficiency under hypoxia.2021

    • 著者名/発表者名
      Hiroko Morimoto, Takuya Yamamoto, Takehiro Miyazaki, Harumi Ogonuki, Atsuo Ogura, Takashi Tanaka, Mito Kanatsu-Shinohara , Chihiro Yabe-Nishimura, Hongliang Zhang, Yves Pommier, Andreas Trumpp, Takashi Shinohara
    • 雑誌名

      Genes Dev.

      巻: 35(3-4) ページ: 250-260

    • DOI

      10.1101/gad.339903.120.

    • 査読あり / 国際共著

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公開日: 2021-12-27  

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