研究課題/領域番号 |
20K06453
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
杉本 道彦 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 開発研究員 (10373317)
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研究分担者 |
田夛 祐喜 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 特別研究員 (10746382)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マウス / 初期発生 / 細胞内小胞輸送 / 胚性致死 / 多能性幹細胞 / scRNA-seq |
研究実績の概要 |
本研究は、細胞内小胞輸送を制御するタンパク質複合体GARP complexを構成する各因子の哺乳類発生過程における役割の違いを、single-cell RNA sequencing (scRNA-seq)により解明することを目的とする。本研究の成果により、これまでに知られていなかった細胞内小胞輸送経路による哺乳類胚発生制御メカニズム解明につながる成果が得られると期待される。 変異マウス胚を用いてscRNA-seqをすすめるための基盤技術として、「scRNA-seqサンプル多重化のための細胞標識技術」を開発し、実用化にこぎつけた。本技術により、scRNA-seqの解析コストを大幅に削減できるようになったとともに、解析データの信頼度も向上させることができるようになった。 scRNA-seq解析のためにはある程度の数の細胞数を集める必要があるうえ、通常はすべてのサンプルを実施当日にすべて同時に調整する必要がある。初期胚でscRNA-seq解析を行うためには複数系統の変異胚を大量に同時に準備する必要があり、実施するには困難である。この点を克服するためには、固定細胞を用いての解析が必須となるが、固定細胞を用いてのmultiplex scRNA-seq解析法はこれまで十分には確立されていなかった。そこで、2021年度は上記サンプル多重化技術を固定細胞に適用し検証実験を進め、こちらも実用化にこぎつけた。この技術を用いて、Vps54変異胚でのscRNA-seqを実施し、現在詳細なデータ解析を進めている。また、残りの変異マウス胚のサンプリングも順調に進められており、上記技術を用いての解析に取り掛かるところである。 独自に開発したscRNA-seqサンプル多重化のための細胞標識技術に関しての特許を出願することができ、当該技術に関する論文も準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
解析のための基盤技術を2つ開発・実用化することができ、1件はすでに特許出願済であり、技術に関する論文もreviseの段階まで至っている。当初計画にはなかった副次的な成果ではあるが、国際出願も検討しており、当該技術を利用した共同研究による成果も学術誌に1件発表した。有用性が高く波及効果も大きい技術を開発できた。また、この技術により変異マウス胚でのscRNA-seq解析が格段に効率的に行えるようになったこともふまえ、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、確立した新規技術を利用して変異マウス由来の初期胚でのmultiplex scRNA-seq解析を進める。また、各変異マウス胚の形態情報を取得し、遺伝子発現と形態的表現型をつなぎ合わせ、GARP complex関連遺伝子群の発生過程における役割を明らかにし成果を取りまとめる。 また、新たに確立した技術の成果についても実施例を積み重ねて報告としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Multiplex scRNA-seq解析に必要な新規技術の開発に取り組んでいたことにより、当初2021年度に実施予定だった初期胚でのscRNA-seq解析の実施が遅れたため、2021年度の物品費の支出が当初計画よりも少なくなった。また、新規開発技術についての特許出願を進めていたことと、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、学会参加のための旅費を使用しなかった。 余剰の物品費は2022年度の物品費に当てる。また2022年度の学会への参加可否は不透明であるが、3ないし4回の学会参加・発表を予定しており、旅費はそれに使用する。
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