本研究課題は、核輸送分子Importin-α4の遺伝子ノックアウト(KO)マウスが、雄性不妊症を発症することを見出したことに端を発する。KOマウス由来の精子は、顕著な運動性の低下、頭部や尾部の形態異常、アクロソーム機能の低下など様々な症状を示すことが分かってきた。さらに、KOマウス精巣において発現変動分子の多くがH3K4me3やH3K27acといったオープンクロマチンの制御下にあること、Taf7lやTbpl1などの転写因子の機能や核局在に関わることで正常な精子の形成に寄与することが明らかとなった。 昨年度には、KOマウスに緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合したアクロソーム分子と赤色蛍光タンパク質(RFP)を融合したミトコンドリア分子を発現するRBGS(Red Body Green Sperm)マウスの作出に成功した。今年度は本マウスを用いて、GFPを指標としたセルソーティングにより高純度の円形精子細胞を回収することに成功し、RNA-シークエンス(RNA-seq)によりImportin-α4の制御下にある発現変動分子を抽出するに至った。加えて、クロマチン免疫沈降 (chromatin immunoprecipitation: ChIP) シークエンス(ChIP-seq)解析も進め、Importin-α4のクロマチン機能についても新しい知見を得た。 以上の解析を通して、Importin-α4が核輸送やクロマチン機能を発揮することが精子の形成に重要であることを明らかにした。
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