研究課題
学術・科学技術の研究に供する動物の微生物モニタリングは、研究結果の信頼性の担保、および動物福祉の観点から必要不可欠である。近年、実験用マウス・ラットの微生物モニタリングは、「おとり動物」を用いた間接的な検査方法から「対象個体」を直接検査する方法への変換・転換が迫られている。申請者等は、動物を安楽死させることなくマウス・ラットの感染症を同時に且つ迅速・簡便に検出できる個体別診断法の確立を最終目的とし、微量血清を用いた多項目イムノクロマト(ICG)法がマウス・ラット感染症の血清診断法として有用であることを明らかにして来た。本研究では、多項目ICG法の検出条件が確定したマウス・ラットの感染症(マウス:マウス肝炎ウイルス感染症、センダイウイルス感染症、ティザー病。ラット:唾液腺涙腺炎ウイルス感染症、センダイウイルス感染症、腎症候性出血熱)の検出における本法の実用性を明らかにすることを目的とし、検出感度を維持した状態でICGスティックを3年間もの長期間保管可能な条件と常温郵送により国内だけでなく国外へも検出感度を維持した状態でICGスティックを供給可能な条件を明らかにした。環境保全や震災等の危機管理体制の観点から、実験動物の微生物モニタリングにおいても電気や特殊装置に依存しない検査方法を整備することは重要である。しかし、本ICG法のように簡便・迅速に肉眼で診断可能な検査法は未だ開発されていない。本研究成果により、国外における実験動物用微生物検査の専門機関や検査設備等の環境が整っていない国や、国内における微生物モニタリングが実施できない小規模動物実験施設等への本ICGスティックの供給が可能となり、実験動物の微生物統御の向上、国内外の相互分与の活発化、および、動物福祉3Rsの「数の削減」に寄与し、生命科学研究の発展に貢献すると考えられる。
1)9th AFLAS Congress 2023 Travel Award, Asian Federation of Laboratory Animal Science Assosiations, September, 20232)土佐紀子:マウス用個別換気飼育(IVC)システムにおける蟯虫感染事例, 寄稿, LABIO 21 91, 17-21, 2024
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