研究課題/領域番号 |
20K06458
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桝 和子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50344883)
|
研究分担者 |
桝 正幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20243032)
岡田 拓也 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60451697)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 脊髄運動神経 / 軸索ガイダンス / 変異マウス |
研究実績の概要 |
脊髄運動神経は特定の筋を支配し運動を制御する。この特異的な神経投射は、発生期に誘引分子と反発分子の相互作用によって形成される。これまでの研究から、後肢の背側筋へ投射する腓骨神経は、後肢芽の腹側に発現するephrinAの反発と背側に発現するEphA・GDNFの誘引によって背側へ誘導されることが分かってきた。しかし、運動神経の投射制御機構は未だ不明な点が多く、軸索誘導の分子機構に関する更なる研究が必要である。 応募者は、腓骨筋萎縮マウス(peroneal muscular atrophy: pma)を用いてこの課題に挑戦している。pmaマウスは、1980年代に日本で発見された自然突然変異マウスであり、ホモ接合体で腓骨神経が欠損するため腓骨筋が萎縮し先天的に内反尖足(clubfoot)を示す。応募者が胎児期の運動神経を観察したところ、pmaマウスでは腓骨神経が形成されず、代わりに腰部に伸びる異常な軸索が存在することが明らかとなった。この異常は腓骨神経が欠損する他の変異マウスで報告されていないことから、pmaマウスの原因同定により運動神経軸索ガイダンスの新たな分子機構の解明に繋がると期待される。 応募者は、連鎖解析により原因遺伝子の候補領域を約1.1 Mbpに絞り込み、この中にある遺伝子に異常な挿入配列があることを明らかにしている。さらに、CRISPR/Cas9を用いて挿入配列を除去することによりpmaの表現型が回復することも明らかにしている。本研究では、pmaマウスで腓骨神経の走行異常が生じる分子機構を明らかにすることにより、運動神経の特異的投射を制御する新しいメカニズムを明らかにすることを目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連鎖解析により原因遺伝子の候補領域を約1.1 Mbpに絞り込み、この中にある全ての遺伝子のエクソンをシークエンスし、フレームシフト変異やナンセンス変異が無いことを明らかにした。次いで、次世代シークエンサーを用いて、候補領域のリシークエンスと胎児のRNAseqを実施したところ、候補領域内のある遺伝子のイントロンに異常な配列が挿入されていることを見出した。そこで、CRISPR/Cas9を用いてその挿入配列を除去したところ、pmaの表現型が回復したことから、この挿入配列が原因となっていることと結論した。さらに、該当遺伝子の欠損によりpmaの表現型が出ることを確認するため、追加の遺伝子改変マウスを作製し、異常出現のメカニズムを調べている。今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、マウスの飼育数を減らしたり飼育施設の管理が手薄になるなどの影響があり、さらに親の介護に時間が取られたため、マウスの繁殖と実験が計画より少し遅れた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに作製した各種遺伝子改変マウスの表現型を観察するとともに、胎児のRNAseq解析を行い、表現型の出現と遺伝子発現異常が相関しているかを調べる。さらに、運動神経走行異常を引き起こす基盤となっている遺伝子発現異常を明らかにし、どのような分子メカニズムで軸索走行異常が生じるかを明らかにする。
|