研究課題/領域番号 |
20K06459
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平手 良和 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 講師 (70342839)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胚盤胞 / 着床 / プロテアーゼ / RNA-seq |
研究実績の概要 |
本研究計画の目的は、胚盤胞と子宮との間で働く着床シグナルのうち、胚盤胞由来の最初期のシグナル、すなわち着床開始シグナルの分子的実体を明らかにすることであるが、その候補として最有力なのが胚盤胞由来のトリプシン様プロテアーゼである。プロテアーゼが子宮管腔上皮の上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)に作用し、細胞内に流入したナトリウムイオンが子宮管腔上皮の脱分極させることで電位依存性カルシウムチャネルを活性化させ、カルシウムイオンの流入を引き起こす。これが刺激となって着床部位における着床関連の遺伝子発現を引き起こすという仮説が立てられているが、このシグナルカスケードの開始点である胚盤胞由来のトリプシン様プロテアーゼについてはまだ明らかにされていない。そこで、本年度は胚盤胞RNA-seqデータを解析することで、この着床開始シグナルとして働くプロテアーゼ遺伝子の絞り込みを行った。UniProtデータベースには分泌型のセリンプロテアーゼ(トリプシン様プロテアーゼ)として162種類のプロテアーゼが登録されており、これらのプロテアーゼのうち、Press8他3遺伝子が胚盤胞のRNA-seqデータを解析することで見いだされた。これらの候補遺伝子の中から着床シグナルとして働く分子をスクリーニングするために、候補遺伝子をCRISPR/Cas9で破壊した胚盤胞を作製し、野生型雌の子宮に移植し、子宮管腔上皮の着床予定部位特異的なアンフィレギュリン(AREG)遺伝子の発現が消失するかどうかを指標としたアッセイを行う。本研究計画によりAREG発現誘導シグナルを明らかにすることで胚盤胞側の着床開始シグナル解明への道筋を付けることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目である2021年度は、2020年度から引き続いてコロナ禍の影響を受ける中での研究実施となった。そこで、胚盤胞でのRNA-seqデータを自前で取得するための準備が整うまでの間は公共データベースに登録されている胚盤胞RNA-seqデータの解析を行うこととし、その結果、着床開始シグナルとして働く可能性のあるプロテアーゼ遺伝子群を見いだすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2022年度は、1)野生型雌マウスの子宮から回収した着床直前の胚盤胞、2)着床不全を示すSox17-GFPノックインマウスのヘテロ個体から回収した胚盤胞、3)in vitro培養した胚盤胞の3実験群からそれぞれRNAを抽出してRNA-seqを行う予定である。また、2021年度の解析で見いだした胚盤胞由来プロテアーゼ遺伝子群の着床への関与を明らかにするため、これらのプロテアーゼ遺伝子群を受精卵でCRISPR/Cas9によって破壊し、そこから発生した胚盤胞が子宮に着床できるかを検証する予定である。これらの実験により、本研究計画の目的である着床開始シグナルの分子的実態を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で2021年度に実施できなかったRNA-seqを行うための予算として60万円を2022年度に持ち越した。
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