研究課題/領域番号 |
20K06462
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
垣内 一恵 北里大学, 獣医学部, 助教 (90509184)
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研究分担者 |
高岸 聖彦 北里大学, 獣医学部, 講師 (20216633)
久保田 浩司 北里大学, 獣医学部, 教授 (80263094)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精原幹細胞 / 異種移植 |
研究実績の概要 |
本研究では、精原幹細胞の分化誘導因子に種特異性があることに着目し、精原幹細胞を移植するレシピエントマウスの精巣においてドナーとなる他動物種由来の分化因子を発現するトランスジェニックマウスを作製し、異種移植により継続的な他動物種由来の精子形成の再構築を目指す。 今年度は、トランスジェニックマウス作製のための発現ベクターの構築を行った。免疫不全マウスには、精細管内移植法が容易であり繁殖し易いKSNヌードマウスを使用するが、分化誘導因子を過剰発現したトランスジェニックマウスは、皮膚への異常が認められることが報告されているため、精巣組織内のセルトリ細胞で特異的に発現するプロモーターヒトAMHの下流で発現を誘導することとした。また異種移植には、既に前精原幹細胞(精原幹細胞の前駆細胞)の精製法が確立し、体外受精や受精卵の体外培養による胚発生能の有無を解析できるブタをモデルにすることから、ブタ由来の精原幹細胞の分化誘導因子を発現する発現ベクターの作製を行った。ブタ由来分化誘導因子に対する動物種に対して特異的に検出できる抗体が無いため、作製したトランスジェニックマウスにおいてブタ由来分化誘導因子の発現を検出することが困難であることが予想されたため、ブタ由来分化誘導因子をFLAG融合タンパク質として発現することとした。 作製した発現ベクターは、13週齢マウス由来セルトリ細胞株のMSC-1と6カ月齢マウス由来セルトリ細胞株の15P1に遺伝子導入し、分化誘導因子の発現を抗FLAG抗体で検出した。その結果、MSC-1細胞株では分化誘導因子の発現を検出することができたが、15P1細胞株では検出することができなかった。この結果は、ヒトAMHプロモーターは6か月齢以降のマウスセルトリ細胞では発現を誘導しない可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスセルトリ細胞で特異的に機能することが報告されていたヒトAMHプロモーター配列を使用して分化誘導因子の発現を試みたが、若齢マウス由来セルトリ細胞株での発現は確認できたが、6カ月齢マウス由来セルトリ細胞株での発現は確認することができなかった。 ブタの前精原幹細胞を異種移植した後、ブタの精子形成周期に基づけば移植後70~100日経過時に精子形成が観察できれば、継続的な精子形成が行われていると判断できる。当初の計画である、ヒトAMHプロモーター下で分化誘導因子を発現する発現ベクターを使用してトランスジェニックマウスを作製した場合には、6カ月齢で分化誘導因子の発現が誘導されない可能性が高く、ブタ前精原幹細胞を異種移植した場合に継続的な精子形成を成し得ない可能性が生じた。従って、ヒトAMHプロモーターとは異なる精巣組織で特異的に機能するプロモーター配列の選択を再検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
申請者らは、ヒトAMHプロモーターとは異なるプロモーター配列で、精巣組織特異的に機能するプロモーター配列の候補を探し出した。現在、候補プロモーター配列のクローニングを行うとともに、その下流で精原幹細胞の分化誘導因子を発現する発現ベクターの作製を行う。 作製した発現ベクターは、13週齢マウス由来セルトリ細胞株のMSC-1と6カ月齢マウス由来セルトリ細胞株の15P1に遺伝子導入し、安定に分化誘導因子を発現することを確認する。セルトリ細胞株において発現が確認できた場合、発現ベクターを使用した免疫不全トランスジェニックマウスの作製を受託研究機関へ依頼し、トランスジェニックマウスのセルトリ細胞における分化誘導因子の発現をタンパク質レベルで確認する。トランスジェニックマウスの作製が完了後、速やかに異種移植によりブタ前精原幹細胞異種移植後の継続的なブタ精子形成の再構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックマウスの受託研究を行うための発現ベクターの構築に問題があったため、受託研究の開始が遅れたため。
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