研究課題/領域番号 |
20K06463
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研究機関 | 公益財団法人実験動物中央研究所 |
研究代表者 |
上原 正太郎 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 研究員 (10733123)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヒト肝キメラマウス / チトクロムP450 / 薬物代謝 / ワルファリン代謝 / チトクロムP450酸化還元酵素 |
研究実績の概要 |
残存マウス肝細胞のチトクロムP450(P450)酵素機能が不活化されたP450酸化還元酵素欠損マウスを基盤としてヒト肝キメラマウスを作製し、薬物代謝特性を評価した。S-ワルファリンは生体内でP450により代謝を受けて数種類の水酸化体へ変換される。S-ワルファリンの酸化的代謝は種差が認められており、ヒトにおいて主に7-水酸化体へ代謝されるが、マウスでは主に4’-水酸化体へ代謝されることが知られている。通常のヒト肝キメラマウス尿中におけるS-ワルファリン主要代謝物は7-水酸化体であるが、同時にマウスP450酵素により生成された4’-水酸化体も検出されるため、ヒトのS-ワルファリン代謝を再現できていない。そこで改良型ヒト肝キメラマウスの薬物代謝特性評価を目的として、S-ワルファリン投与後の尿中主要代謝物を解析した。改良型ヒト肝キメラマウス尿中の主要代謝物は7-水酸化ワルファリンとその抱合体であり、ヒトの場合と同様であった。一方、改良型ヒト肝キメラマウス尿中の4’-水酸化ワルファリンはわずかに検出されるのみであり、本マウスのS-ワルファリン代謝における残存マウスP450酵素活性の影響は通常ヒト肝キメラマウスの場合と比較して小さいと考えられた。またP450酸化還元酵素欠損マウスに投与されたS-ワルファリンは、主に未変化体として尿中に排泄された。以上、P450酸化還元酵素欠損マウスを基に作製されたヒト肝キメラマウスは、残存マウスP450酵素活性の影響が低減したことにより、通常ヒト肝キメラマウスと比べてよりヒトと類似した薬物代謝特性を有することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チトクロムP450酸化還元酵素欠損マウスを基盤に改良型ヒト肝キメラマウスを作製した。改良型ヒト肝キメラマウスにおけるS-ワルファリンの主要代謝はヒトと同様に7-水酸化体であり、マウスのS-ワルファリン主要代謝物である4’水酸化体の生成量はわずかであった。 改良型ヒト肝キメラマウスはヒト代謝物予測に有用であり、ヒト型肝毒性評価モデルを作製するための基盤となることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
P450酸化還元酵素欠損マウスを基盤に作製した改良型ヒト肝キメラマウスの薬物代謝特性の評価を進める。さらに改良型ヒト肝キメラマウスを用いて作製した薬物性肝障害モデルの薬物体内動態に基づく毒性評価を実施する。近年、ヒト肝キメラマウス由来の肝細胞の研究利用が可能となった。改良型ヒト肝キメラマウスの薬物体内動態および毒性評価に対する有用性をin vivoおよびin vitroの両面で比較検討していく。
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