研究課題
最終年度はS-ワルファリンを用いたin vivo代謝実験によりPor cKO肝臓ヒト化マウスの薬物代謝能を検証した。S-ワルファリンを単回静脈内投与後のPor野生型マウス、Por cKO(null/flox)マウス、従来型ヒト化肝臓マウスおよびPor cKOヒト化肝臓マウスの血漿および尿中のS-ワルファリン代謝物(S-4'-/6-/7-/8-水酸化ワルファリン)を測定した。代謝物の血中濃度曲線下面積を比較すると、4'-水酸化体はPOR cKOヒト化肝臓マウスの方が従来型ヒト化肝臓マウスに比べて低く、6または7-水酸化体は従来型ヒト化肝臓マウスよりもPor cKOヒト化肝臓マウスの方が高かった。S-ワルファリン投与後のPor cKOヒト化肝臓マウスの尿中に最も多い代謝物はS-7-水酸化体であり、次いでS-6-水酸化体、S-4'-水酸化体および8-水酸化体であった。マウスのS-ワルファリン主要代謝物であるS-4'-水酸化体は、Por cKOヒト化肝臓マウス尿中の従来型ヒト化肝臓マウスに比べて著しく少なく、肝臓のPorが欠損した特徴を反映していることが推察された。以上、Por cKOヒト化肝臓マウスは、肝臓の残存マウスP450酵素活性が低減したことにより、従来型ヒト肝キメラマウスと比べてより鮮明にヒト型のS-ワルファリン代謝を示した。研究成果を統括すると、従来型ヒト化肝臓モデルは残存マウス肝P450活性が原因で医薬候補品の有効性および安全性の予測不良を招く可能性があった。本研究で作製したPor cKOヒト化肝臓マウスは肝臓特異的Por欠損に伴ってマウス肝P450酵素活性が低下しており、従来型のヒト化肝臓モデルに比べ、よりヒトに近い薬物代謝能を持つことが示唆された。今後、肝Por欠損ヒト化肝臓マウスは薬物動態・安全性研究のための新しいプラットフォームとしてその活用が期待される。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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