研究課題
今年度はLsCreを細胞およびマウスに投与するためAAVにパッケージングし、In vitro およびIn vivoでのLsCreのノックインを試みた。マウス大脳皮質にCas9発現カセット、Cre レポーター(CAG-Flox-Stop-EGFP)カセット、gRNA発現カセットおよびドナー用LsCreを搭載したAAVを共導入し、In vivoでのノックインを試みた。その結果、Cas9を共導入しなかった場合でも、Cre レポーターからEGFPの発現が確認され、プラスミドでは抑え込めていたLsCreのリークが何故かAAVでは抑え込めないことが新たにわかった。なぜ、プラスミドでは抑え込めていたLsCreのリークがAAVでは抑え込めないのかを明らかにするため、培養細胞にLsCreプラスミドを導入した群とLsCreAAVを感染させた群からmRNAを採取し、5'RACEを行い発現しているmRNAを確認した。その結果、LsCreAAVを感染させた群ではLsCre配列の上流にLsCreの配列が繰り返し確認された。これはAAVがエピソーマルに遺伝子を発現する場合ITRを介して環状のコンカテマーを形成することが原因を考えられ、この結果、LsCre上流にプラスミドではあらわれないプロモーター活性を持つ余分な配列が挿入されてしまったことによりリークが起こってしまっていることが確認された。
3: やや遅れている
今年度行ったAAVを用いたLsCreのIn vivo ノックイン実験の結果、プラスミドでは完璧に抑え込めていたCre活性のリークが何故かAAVでは抑え込めないことが新たに明らかになった。5'RACEなどの実験の結果、LsCreAAVを感染させた群ではLsCre配列の上流にLsCreの配列が繰り返し確認された。これはAAVがエピソーマルに遺伝子を発現する場合ITRを介して環状のコンカテマーを形成することが原因を考えられ、この結果、LsCre上流にプラスミドではあらわれないプロモーター活性を持つ余分な配列が挿入されてしまったことによりリークが起こってしまっていることが確認された。以上の結果は本研究課題が採択されたときには予想されなかったものであり、結果、進行状況は予定より遅れていると考えた。
現在までの実験結果から得られた仮説では、AAVがエピソーマルに遺伝子を発現する際にITRを介して形成するコンカテマーが原因でリークが起こっていると考えられる。これは、ITR以外のAAVパッケージングシグナルを用いた場合リークを防ぐことができる可能性を示唆している。現在、ITRの一部であるADドメインのみを使ったAAVへのパッケージングを試みており、ADドメインでLsCreをパッケージングした場合、LsCreがIn vivoでもリークしないかを確認中である。今後は、このようにAAVで導入された遺伝子がコンカテマーを作らないような方法でLsCreをIn vivoでノックインできないかを検討していく予定である。
コロナによる実験停止期間、ラボの移転などにより、予想されていた研究期間内では想定の結果を得ることができなかったため、事業を持ち越し、引き続き研究を行っていくため。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Gene Therapy
巻: 30 ページ: 641~648
10.1038/s41434-023-00398-x
Neuron .
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