遺伝子工学的に細胞特異的な遺伝子発現をさせるためのノックイン(KI)モデル動物の作製が困難な生物種に対応できるように、さまざまな動物種において細胞特異的な遺伝子発現を実現する技術の開発を目指した。生後の動物においてde novo ノックインを行う際、ドナーとして細胞内に導入したCreが意図せず発現してしまい(リーク)、目的以外の細胞で遺伝子が発現してしまう現象が観察された。そこで、ノックインされるまでドナーから非特異的な遺伝子発現を抑えるためにコドン改変を行ったリークレスCre(LsCre)を開発した。LsCreはプラスミドを用いた電気穿孔法によるin vivo 遺伝子導入では予想通りリークしないことが確認された。次に狭い範囲でしか遺伝子導入できない電気穿孔法ではなく、全身で遺伝子導入のできるアデノ随伴ウイルス(AAV)にLsCreを組み込んで、in vivo 遺伝子導入を行った。その際に効率的にAAVを製造、精製する技術開発も行い、報告した。AAVにLsCreを組み込んでin vivo 遺伝子導入を行ったところ、予想外のリークが引き起こされる事実が新たに発見された。これは、AAVが発現する際に細胞内でコンカテマーと呼ばれる環状のDNA複合体を形成するためではないかと現在予想されている。今後はAAVにおいてもリークしない新たなLsCreの開発を進めていく。
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