研究課題
脳内の神経伝達物質として働くオキシトシンは、その受容体を発現する神経細胞の機能を修飾し、養育行動・夫婦や家族の絆・他者への信頼などの社会性行動を促進的に制御する。抗不安作用・抗ストレス作用も有しており、研究者のみならず広く一般の注目を集めているが、オキシトシン受容体に対する良質な抗体が入手できないことが、複雑なオキシトシン神経回路網の機能解明において大きな障壁となっていた。令和2-3年度は、マウス受精卵を用いたゲノム編集により、オキシトシン受容体タンパク質のC末端にエピトープタグを複数付加したノックインマウスを作製し、タグに対する特異的抗体を用いた超解像度顕微鏡解析により、オキシトシン受容体が神経細胞の細胞体および神経突起に局在することを初めて検出した。また、別途作製した赤色蛍光タンパク質ノックインマウスは、オキシトシン受容体を発現する神経細胞に対してパッチクランプ法による電気生理学的解析を初めて可能にした。さらに、オキシトシン受容体発現細胞においてCre組換え酵素あるいは誘導型Cre-ERT2を発現するマウス系統を樹立し、光遺伝学等を用いた神経回路操作による機能解析を後押しした。以上の新規マウス系統について、米国神経科学会公式ジャーナルへの論文掲載、同学会年会でのポスター発表を通じて、各国のオキシトシン研究者に情報を共有した。これらのマウス系統は、世界的に広く活用してもらえるよう、理研バイオリソースセンターおよび米国The Jackson Laboratoryへ寄託ずみで、既に複数の共同研究が進行中である。最終年度は、もう一つの課題であった既存のCreレポーターマウス(Ai9)をゲノム編集により改変した「改変型Ai9」の解析を行なったが、誘導型Cre-ERT2マウスとの交配時に期待通りの誘導が得られず、その原因を突き止められなかったため、論文発表に至らなかった。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 4件) 備考 (1件)
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