研究課題/領域番号 |
20K06468
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
日野 敏昭 旭川医科大学, 医学部, 助教 (10550676)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵管 / 初期胚 / 蠕動運動 / 卵管液 / in situ / 子宮 |
研究実績の概要 |
目的:本年度は、受精卵(初期胚)がどのように卵管内を移動して子宮に至るのかについて調査した。 方法:発情前期の雌マウスを一晩雄マウスと同居させ、翌朝、膣栓の有無をもって交尾の正否を判定した。交尾が成立した日を妊娠1日目とし、妊娠1~3日目の雌マウスにおける初期胚の挙動や、それに影響を及ぼすと考えられる卵管の蠕動、ならびに卵管液の流向の変遷を、生体に卵管を繋げた状態で観察した。具体的には、妊娠1~3日目の雌マウスを吸入麻酔し、卵管を背側から腹腔外に引き出してそこに保持した。続いて卵管を囲うように還流用カラーを設置し、カラー内にPBS(37度、0.1%BSA含)を循環させてから観察した。卵管液は、卵管内に微量の墨汁を注入して可視化した。 結果:マウスの卵管は、卵巣側から順に卵管采、卵管漏斗部、膨大部、狭部、卵管子宮接合部に分けられるが、妊娠1日目の卵管では、狭部の上部(膨大部に隣接する部位)に顕著な卵巣方向の蠕動がみられ、初期胚はその蠕動にせき止められるように膨大部に滞留していた。妊娠2日目になると、妊娠1日目で観察された蠕動は消え、膨大部あたりに子宮方向の蠕動が出現した。さらに狭部の下部付近に卵巣方向の蠕動が出現し、卵管液はそれらの蠕動に同調するように、卵管内を卵巣方向や子宮方向に行ったり来たり繰り返していた。初期胚はこの流れに同調するように卵管内を動いていた。妊娠3日目では、妊娠2日目で観察された蠕動は消え、狭部の下部や卵管子宮接合部に子宮方向の蠕動が出現した。初期胚はちょうど、これら蠕動がみられた場所に存在しており、蠕動に押されるように、子宮に向かって少しずつ移動しているのが確認された。 まとめ:以上から、マウス生体の卵管において、初期胚は、卵管の蠕動や卵管液の流れの影響を受けながら子宮に向かって移動していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はコロナ禍による研究活動の自粛のため、研究遂行に遅れが生じ、予定していた実験計画のうち、GFPマウスを使った初期胚のライブイメージングの立ち上げを完遂できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はGFPマウスを使った初期胚のライブイメージングをすみやかに立ち上げ、その手法を使った卵子の卵管内輸送や、受精の有無が、卵管の蠕動や卵管液の挙動、ならびに初期胚の移動に及ぼす影響を調査する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国在住の共同研究者(研究協力者)が、コロナによる入国制限のため来日できず、予定してた共同実験や研究の打ち合わせが行えなかった。そのため、計上していた研究協力者の宿泊費が浮いてしまい、次年度使用額が生じた。また、コロナ禍による研究自粛のため、実験開始に遅れが生じ、計画通りの予算執行に狂いが生じたことも一因にあげられる。共同研究者の来日と共同実験は、入国規制が解除されたらすみやかに行い、そこに繰越金を充当する予定である。
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