研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞から胸腺上皮細胞(Thymic epithelial cell: TEC)を分化誘導するために、TECの発生に必要と考えられる転写因子をドキシサイクリン依存的 に任意のタイミングで発現させることのできるiPS細胞を、piggyBacベクター(Woltjen et al., Nature (2009), Kim et al., Methods Mol. Biol. (2016))を用いて樹立した。 樹立したiPS細胞をアクチビンAとGSK3betaの阻害剤を用い、TECの発生起源である内胚葉に分化させた。内胚葉誘導後にドキシサイクリンを添加し、導入した転写因子を発現させた。転写因子のmRNAの発現は定量的PCRに て、タンパク質の発現はウェスタンブロッティング法にて確認した。その後、ドキシサイクリン存在下で培養を継続し、 胸腺上皮細胞(TEC)が発現する遺伝子(EPCAM、ケラチン5(KRT5), DLL4)が発現していることを定量的PCRにて確認した。一方、成熟 TECが発現しているHLA-DR, AIREなどは発現が認められなかった。これらの結果から、iPS細胞から誘導できた細胞は胸腺上皮前駆細胞様細胞であることが示唆された。そこで引き続き、iPS細胞由来胸腺上皮前駆細胞様細胞を機能的な胸腺上皮細胞に誘導するために、更なる成熟過程が必要と考えられた。そのために現在、(1) オルガノイドを形成し、in vitroでの成熟誘導ならびに、(2) iPS細胞由来の細胞を胸腺上皮細胞欠損マウスに移植し、移植したiPS細胞由来細胞がin vivoにて機能的な成熟胸腺上皮細胞に分化するかどうかの検証を行なっている。
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