研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞から胸腺上皮細胞(Thymic epithelial cell: TEC)を分化誘導するために、ドキシサイクリン依存的に任意のタイミングで、TECの発生に必要と考えられる転写因子を発現させることのできるiPS細胞を樹立した。 樹立したiPS細胞をアクチビンAとGSK3betaの阻害剤を用い、TECの発生起源である内胚葉に分化させた。その後ドキシサイクリンを添加し、導入した転写因子を発現させた。ドキシサイクリン存在下でさらに培養を継続し、得られた細胞の遺伝子発現を定量的PCR法にて検証した。その結果、 胸腺上皮細胞(TEC)が発現する遺伝子の内、EPCAM、ケラチン5(KRT5), DLL4を発現していることが確認された。一方、成熟TECが発現しているHLA-DR、AIREなどは発現が認められなかった。これらの結果から、iPS細胞から誘導された細胞は、胸腺上皮前駆細胞様細胞(TEC-progenitor like cell: TEPLC)である可能性が示唆された。 iPS細胞由来TEPLCを機能的なTECに誘導するための成熟過程では、T細胞前駆細胞を含むTEC以外の細胞との相互作用が必要と考えられた。そこで最終年度では、iPS細胞由来TEPLCを胸腺上皮細胞欠損マウスに移植し、生体内の環境で、移植したiPS細胞由来TEPLCが機能的な成熟TECに分化するかどうかの検証を行なった。
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