元来は、脳の雌性化は受動的プロセスで、周生期にアンドロゲンが作用しないと、基本型である雌脳としてそのまま発達すると考えられていた。本研究により、1)雌の脳内にも射精に至るまでの全ての雄型性行動パターンを発現させる神経機構が潜在的には存在していること、2)LPGi中間亜核を起点としたセロトニン作動性の抑制型神経回路が発達していることが、雌性が異性行動を示さない要因であることを明らかにした。即ち、雌脳への性分化の過程は、雄型性行動に対する抑制型神経回路を積極的に発達させる能動的プロセスであることを提唱し、脳の性差研究に新たな知見をもたらすものであると考える。
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