研究課題/領域番号 |
20K06472
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
三好 和睦 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (70363611)
|
研究分担者 |
佐藤 正宏 鹿児島大学, 総合科学域総合研究学系, 教授 (30287099) [辞退]
川口 博明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60325777) [辞退]
井尻 萌 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 助教 (20836233)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ブタ / 胚盤胞 / 凍結保存 |
研究実績の概要 |
現在、豚熱の影響によりブタの移動が制限されているため、作製した体細胞クローン胚をすぐには仮親に移植できない状況が続いている。この問題を解決する方法の一つは、体細胞クローン胚を凍結保存しておき、仮親が準備できた時に融解して移植することであるが、ブタ生殖細胞の凍結保存技術は未だに確立されていない。最近、我々は新規凍害保護剤であるcarboxylated poly-L-lysine(CPLL)や3,3-dimethylglutaric anhydride poly-L-lysine(DMGA-PLL)を用いることにより、ブタ精子を効率的に凍結保存し得ることを見出した。そこでこれらの凍害保護剤を用いて、比較的耐凍性が高いとされている胚盤胞の凍結保存を試みた。材料には、体外受精卵に由来する初期胚盤胞および拡張胚盤胞を用いた。最初に、種々の濃度のCPLLを含む液中で凍結保存した結果、初期胚盤胞の融解2日後および拡張胚盤胞の融解1日後の生存率は、10%区が0%区より有意に高くなった。次に、種々の濃度のDMGA-PLLを含む液中で凍結保存した結果、拡張胚盤胞の融解2日後の生存率は、10%区が0%区より有意に高くなった。最後に、10%のCPLL あるいはDMGA-PLLを含む液中で凍結保存した結果、融解1日後の生存率は初期胚盤胞および拡張胚盤胞のいずれにおいても、10%CPLL区および10%DMGA-PLL区が無添加区より有意に高くなった。しかし融解2日後の生存率は、初期胚盤胞および拡張胚盤胞のいずれにおいても、10%DMGA-PLL区のみが無添加区より有意に高くなった。以上の結果から、10%DMGA-PLLを添加することにより、ブタ胚盤胞を効率的に凍結保存し得ることが明らかとなった。この技術を用いれば、作製した体細胞クローン胚を仮親が準備できるまで保存しておくことが可能になると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定されていた体細胞クローン胚の仮親への移植が、豚熱の影響により困難になった。その解決策として、予定になかった生殖細胞の凍結保存技術確立を行ったため。加えて、本研究の遂行には実験材料として用いる卵子を安定的に供給するために食肉センターからブタ卵巣を提供していただく必要があるが、新型コロナウイルス感染症の影響により食肉センターへの立ち入りが禁止され、研究が中断してしまう状況が続いているため。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、新型コロナウイルス感染症の影響により食肉センターからブタ卵巣を入手できない期間が生じ、その結果、材料となる卵子がないため体細胞クローン胚の作製自体が停止してしまう状況が起きている。この状況を打開するためには、ブタ卵子の凍結保存技術を開発する必要がある。それにより、卵巣を入手可能な期間に卵子を採取して凍結保存しておき、食肉センターに立ち入りできない期間もそれらを融解して実験に用いることができる環境を整えたいと考えている。また、豚熱の影響により体細胞クローン胚を仮親に移植できない状況は、今後も継続することが予想される。よって、体外における実験に絞って実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
豚熱の影響により、マイクロミニピッグの購入ができなかったため。また、出席を予定していた学会が新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン開催となったので、旅費が不要になったため。当該助成金は、次年度の物品費に加えたいと考えている。
|