研究課題
終末糖化産物(AGEs)は糖化蛋白で、加齢や糖尿病によって促進的に形成され、AGEs受容体(RAGE)への結合を介して酸化ストレスや炎症を惹起し、糖尿病合併症の発症と進展に関わることが明らかとなりつつある。糖尿病では寿命・健康寿命ともに短縮することが報告されているが、AGEs-RAGE系が関わっているかどうかは明らかではない。我々は、AGEsもしくはRAGEに特異的に結合し、AGEsによる酸化ストレス・炎症を制御することのできるDNAアプタマーの開発に成功した。db/dbマウスはレプチン受容体を欠損しており、過食による肥満と高血糖を呈することが特徴で、肥満糖尿病モデルとして広く用いられている。さらに、db/dbマウスを高脂肪食で飼育すると寿命が著しく短縮することが報告されている。本研究では、高脂肪食を負荷したdb/dbマウスを用い、薬液除法作用のある浸透圧ポンプを用いてコントロールDNAアプタマー、AGEs中和DNAアプタマーもしくはRAGE阻害DNAアプタマーを持続皮下投与した。比較対象にはコントロールDNAアプタマーを投与した通常食飼育のdb/dbマウスを用いた。98日の観察期間中に通常食で飼育したdb/dbマウスは死亡しなかったが、高脂肪食負荷db/dbマウスは56日目には著明な腎障害を呈しており、64日目より死亡個体が出現しはじめた。しかし、RAGE阻害アプタマーを投与した高脂肪食負荷db/dbマウスでは、腎障害が軽減されるとともに、82日目まで死亡個体が出現せず、平均生存日数の向上が認められた。本研究から、糖尿病における寿命の短縮にはAGEs-RAGE系が関わっており、AGEs-RAGE系を阻害するDNAアプタマーの有用性が示され、新たな治療法の開発につながると予想される。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 30 ページ: 6505
10.3390/ijms24076505