研究課題
研究代表者は、これまでにヒトIL-3とGM-CSFを導入したダブルトランスジェニックNOGマウス(IL-3/GM-CSF Tgマウス)を開発し、ヒト造血幹細胞移植後にT細胞、B細胞、マクロファージ、樹状細胞に加えてマスト細胞や好塩基球などのアレルギー関連免疫細胞が分化成熟し、アレルゲン特異的IgE抗体とアレルゲンの投与により生体内脱顆粒を伴うアレルギー応答が惹起されることを見出した。さらにこのIL-3/GM-CSF TgマウスとヒトIL-5 Tgマウスを掛け合わせたIL-3/GM-CSF/IL-5 Tgマウスを作製し、IL-33の気管内投与により好酸球性気管支喘息モデルを作製した。本研究ではこのIL-3/GM-CSF/IL-5 Tgマウスを用い、IL-33皮下投与によるアトピー性皮膚炎モデルを作出し、これら病態におけるヒト好酸球の動態について解析する。今年度は、IL-3/GM-CSF/IL-5 Tgマウスへ、オキサゾン塗布またはIL-33を皮内投与し、皮膚炎症状や浸潤ヒト細胞の解析を行った。昨年度に実施したIL-3/GM-CSF Tgマウスと同様に、IL-3/GM-CSF/IL-5 Tgマウスのオキサゾロン塗布部位においても溶媒塗布部位と比べて表皮の肥厚および、ヒトT細胞の浸潤が認められた。一方でヒト好酸球については、若干の浸潤が認められたものの、コントロールとほぼ同程度であった。また、IL-33の皮内投与により好酸球浸潤の誘導を試みたが、現在のところ好酸球浸潤の亢進は認められておらず、コントロールマウスと同程度であった。次年度はIL-33投与条件の検討を行い、並行して新たなマウス系統を用いた皮膚炎モデルの構築を試みる。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、計画通りIL-3/GM-CSF/IL-5 Tgマウスへのオキサゾロン塗布とIL-33投与実験を実施した。好酸球の誘導が十分ではなく、課題は残るものの、皮膚炎病態の再現を含めて次年度に向けて一定の成果は得られており、新たなヒト化モデルの実現が期待できる。
引き続きIL-3/GM-CSF/IL-5 Tgマウスを用いた皮膚炎モデルを検討するが、より安定的で効果的なモデルの開発を並行して実施したいと考えている。現在新たなNOGマウス系統の樹立を行なっており、次年度以降にヒト化と皮膚炎の誘導試験を開始する予定。
室員の退職により、今年度予定していたいくつかの実験ができず、次年度に実施する予定である。そのため、ヒト化マウス作製にかかる費用分を次年度に繰り越すこととした。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件)
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