研究課題/領域番号 |
20K06480
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
下澤 律浩 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50300786)
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研究分担者 |
揚山 直英 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター, 主任研究員 (50399458)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カニクイザル / ライソゾーム病 / 神経疾患 / 繁殖 / 生物資源 |
研究実績の概要 |
CLN2変異遺伝子を持つと推定された個体(CLN2変異ヘテロ型)の子孫で現在生存している72個体における変異遺伝子の伝達状況を調べたところ、CLN2変異ヘテロ型およびCLN2野生型は両者共に36頭(50%)であった。これらの内、現時点で成熟年齢に達している個体は26頭(雌18頭、雄8頭)であった。それらのCLN2野生型個体との交配を含めた妊娠成績は、15.6%(19/122)であった。その中でCLN2変異ホモ型個体を産出可能なCLN2変異ヘテロ型雌雄間における妊娠成績は、22.2%(4/18)であり、雌10頭および雄5頭の繁殖能力を確認した。また、妊娠中に胎児の遺伝子型の特定が可能か否かを検討するために、まず妊娠していない個体における血液中のcell-free DNAの抽出とその遺伝子型解析を行った。その結果、CLN2野生型および変異ヘテロ型から抽出したcell-free DNAにより遺伝子型の特定は可能であった。次に、既に安楽殺したCLN2変異ホモ型個体において、詳細なCLN2疾患の病態を明らかにするために、脳におけるアストロサイトおよびミクログリアの局在をGFAPおよびIba-1抗体を用いて免疫組織学的に解析した結果、それらのびまん性増殖を確認した。さらに、現在生存しているCLN2変異ホモ型個体において、軽度な身体の震えのような神経症状が観察された。そこで、既に安楽殺した個体で検査できなかったCLN2疾患特有のcurvilinear profile(CLP)と呼ばれる細胞内の微細な蓄積物質の有無を電子顕微鏡で観察するために、筋生検を行った。その結果、予測されたようにCLPを確認した。一方、ヒトにおいて網膜色素変性症も一部で併発することが報告されていることから、当該個体においても眼底撮影を行ったが、異常は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CLN2変異ホモ型個体の作出に必要なCLN2変異ヘテロ型個体がコロニー内に多数存在することが確認され、CLN2疾患カニクイザルを生産するコロニーの母群とすることができた。また、生存しているCLN2変異ホモ型個体の発症が確認され、病態などに関わるデータの取得や解析が大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
繁殖能力を有するCLN2変異ヘテロ型個体を新規に抽出するとともに、交配を必要としない人工授精を利用することで、CNL2変異ホモ型個体を作出する基盤の強化を図る。特に人工授精においては、長期不妊個体や雌雄同居により交尾が確認できない(膣スメアに精子が確認できない)個体に適用する。また、CLN2変異ヘテロ型個体間の交配で生まれる仔の遺伝子型検査、および妊娠中に胎児の遺伝子型を調べることが可能か否かを羊水あるいは血液を用いて検討する。神経症状が見られたCLN2変異ホモ型個体の行動解析、MRI撮像、血液検査などを実施し、疾患の詳細な解析を進める。さらに、iPS細胞の樹立に着手する。
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