研究課題/領域番号 |
20K06483
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西田 知訓 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任講師 (10598436)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Qin / piRNA / PIWIタンパク質 / 生殖細胞 / 第一次piRNA生合成機構 |
研究実績の概要 |
piRNAは、PIWIタンパク質と複合体を形成することで、標的遺伝子であるトランスポゾンの発現を抑制し、生殖ゲノムの維持で機能する。 piRNAは、第一次生合成機構で生成された後、第二次生合成機構で増幅される。私が行なった解析から、Spn-EとQinは第一次生合成機構で機能することが明らかになってきた。Siwiのノックダウンにより、特に発現が上昇する新規トランスポゾンが存在し、Qinは、そのトランスポゾン由来のpiRNAの生成に関わっているのに対し、Spn-Eはトランスポゾン由来のpiRNA以外のpiRNAの生成に関与していた。Spn-EとQinは、共に第一次生合成機構で機能するに関わらず、異なるpiRNAの生成で機能することがそれらの作用機序については未だ不明である。 私が行った解析から、Siwi又はQinのノックダウンにより、新規トランスポゾンのアンチンセンス鎖の長鎖RNAが蓄積することが判明した。このRNAがpiRNA前駆体であることが示唆された。この長鎖RNAをゲルから抽出しDNase処理後、新規トランスポゾンのアンチセンス鎖に相補的なプライマーを用いたRTのサンプルをPCRを行ったところ、PCR産物が増幅することが判った。現在、この長鎖RNAのクローニング及びRNA-seq、piRNAの情報を用いたバイオインフォ解析の両方からpiRNA前駆体の全貌、そしてpiRNA前駆体が生成されるpiRNAクラスターの同定を試みている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一次piRNA生合成経路は、第二次piRNA生合成と比較して解析が進んでいなかった。さらに、piRNAの元となるpiRNA前駆体についても知見は乏しかった。 私が行った解析により、これまで見えていなかった長鎖RNAがノーザンブロット解析により検出された。また、この長鎖RNAをゲルから抽出しDNase処理後、新規トランスポゾンのアンチセンス鎖に相補的なプライマーを用いたRTのサンプルをPCRを行ったところ、複数のバンドが検出されることが判った。つまり、アンチセンス鎖の新規トランスポゾンの配列が増幅されていると考えられる。このPCR産物をシークエンスで読み、配列情報をカイコゲノムにマップすることでpiRNAクラスターの手がかりになると期待される。このことから、本研究課題は、進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
私が行った解析から、少しずつではあるがpiRNA前駆体の配列情報とpiRNAクラスターの同定につながる結果が得られている。今後の研究の推進方策は、現在得られているPCR産物の配列をシークエンスで読み、ゲノムにマップし得られた情報を元に、プライマーを設計しPCRを行い更に配列情報を得る。そのことにより、piRNA前駆体の全貌、そしてpiRNAクラスターの同定に繋がると考えられる。更に、piRNAの情報とRNA-seqの情報を用いたバイオインフォ解析により、更に正確なpiRNAクラスターの情報が得られると期待される。また、得られた情報を精査することで、QinとSpn-Eの機能の違いを明らかにする手がかりを得られることを目指す。
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