QinおよびSpindle-E(Spn-E)は,生殖組織特異的なRNAサイレンシング機構を担うpiRNAの生合成に必須の因子である.本研究では,現在樹立されている唯一の生殖細胞由来培養細胞株であるカイコ卵巣由来BmN4細胞を用いて,両者の分子機能と作用機序を解明することを目的とした. 【1. カプシド様構造の観察】透過型電子顕微鏡を用いて,BmN4細胞内の構造観察を行った.その結果,野生型と比べてQin発現抑制下では細胞質に多数のカプシド様構造が認められたことから,Qinはトランスポゾンカプシド様構造の形成を抑制することが明らかになった. 【2. Qinが抑制するトランスポゾンの解析】次世代シーケンサーを用いて,Qin発現抑制下で発現するRNA配列の網羅的な解析を行った.その結果,第一次piRNA生合成経路の中核因子であるSiwiによって抑制されるトランスポゾンのうち,新規LTR様トランスポゾンCountdown(Cd)のみが顕著に脱抑制されたことから,QinはCdの発現を特異的に抑制する因子であることが示唆された. 【3. Qinが生合成に寄与するpiRNAの解析】次世代シーケンサーを用いて,Siwiに結合するpiRNA配列の網羅的な解析を行った.その結果,Qin依存的に生合成されるpiRNAが生み出されるCd相同ゲノム領域を複数候補同定した. 【4. Qinが結合するpiRNA前駆体の解析】ノーザンブロットにより,Qin発現抑制下で蓄積するCd-piRNA前駆体を検出した.その結果,Cd-piRNA前駆体にはpolyAが付いていること,さらに,Qinモノクローナル抗体を用いたRNA免疫沈降法よりQinと結合していることが明らかになった.現在,PacBio Sequel IIによるCd-piRNA前駆体配列の解析を進めている.
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