研究課題/領域番号 |
20K06485
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 智裕 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (80212223)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セントロメア / CENP-A / 染色体 |
研究実績の概要 |
発生、分化、ストレス応答の重要な局面において、セントロメアクロマチンから大部分のCenp-A ヒストンが除去さる現象(以下、セントロメア崩壊とよぶ)が、広い生物種にわたり報告されているが、その分子機序は明確ではない。セントロメアは動原体の礎として堅牢に維持されるべきと考えられてきたが、セントロメア崩壊は、この概念を転換する生命現象であり、新規性が極めて高い研究対象である。本研究では、分裂酵母で観察されるセントロメア崩壊を研究対象として、セントロメアクロマチンからCenp-A を除去する分子機序と、その制御メカニズムを解析する。 申請者らは、分裂酵母の通常生育時にCenp-Aヒストンの分布を調節するメカニズムの解明に取り組んできた。その結果、セントロメアの過剰なCenp-Aヒストンを除去する機構としてCdc48六量体をベースとする複合体(Cdc48-Ufd1-Npl4)を同定した。Cdc48-Ufd1-Npl4複合体を人為的にセントロメアに誘導すると、Cenp-Aの除去を促進できる。この実験では、生育に必須な通常染色体のセントロメアを標的としているので、Cenp-Aの除去効率を過小評価している可能性が高い(Cenp-Aの大幅な減少は、増殖停止・細胞死を招くので)。 本年度は、生育に不要なミニ染色体Ch16を標的として、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体の誘導によるCenp-Aの除去効率を検討した。その結果、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体をミニ染色体Ch16のセントロメアに選択的に誘導することにより、CENP-Aが除去されることを確認できた。さらに、CENP-Aの除去によりミニ染色体のセントロメア機能が損なわれ、この染色体の脱落頻度が有意に上昇することも示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体をミニ染色体Ch16のセントロメアに選択的に誘導し、その影響を観察することであった。Cdc48-Ufd1-Npl4複合体の誘導により、CENP-Aが除去されること、さらに、CENP-Aの除去によりミニ染色体のセントロメア機能が損なわれ、この染色体の脱落頻度が有意に上昇することも示すことができた。これらの結果は、、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体が直接的にセントロメアクロマチンに作用し、CENP-Aを除去することを強く示唆する。当初の計画通り、セントロメア崩壊の分子機序を解明できたものと判断するので。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、1)2020年度の結果を論文発表し(目下、投稿準備中)、2)Cdc48-Ufd1-Npl4複合体の制御因子の解析を試みる。 Cdc48-Ufd1-Npl4複合体のCenp-A除去活性は、培養条件により変動することが予想される(①通常生育時はCenp-Aの適性分布維持のための基底レベルであり、②Cenp-Aを高発現することにより上昇、さらに③窒素源飢餓時にはセントロメア崩壊を引き起こすまでに上昇)。これらの変動を引き起こすCdc48-Ufd1-Npl4複合体の活性制御因子を同定・解析し、セントロメア崩壊の分子機序を解明したい。そのため、上記①、②、③の培養から、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体を単離し、いずれかの培養条件に特異的に見出せる結合因子(あるいは翻訳後修飾)を質量分析により同定する。
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