今年度は、昨年、新たに作出したtL(CAA)Δint株(SHSC0416)での再解析をまずは中心に進めた。その結果、以前のtL(CAA)Δint株(TYSC2148)同様、tL(CAA)Δint株(SHSC0416)でも薬剤感受性やRQC関連異常等が確認された。特に、GFP遺伝子とFLAG-HIS3遺伝子との間にArgまたはLysコドンの繰り返しを含むレポータープラスミドを用いた解析からは、負電荷のリボソームトンネルと正電荷の新生鎖の相互作用により生じるはずのリボソーム停滞が、tLeu(CAA)Δint株(SHSC0416)で抑制され、翻訳が継続されていた。さらに、これまで野生株でリボソーム停滞が生じることが知られていなかったLeuコドンの繰り返しにおいても、tLeu(CAA)Δint株(SHSC0416)では、コドンの種類に関わらず、リボソーム停滞が抑制され、翻訳が継続されることが判った。この翻訳上昇傾向は、単にレポータープラスミドに限ったものではない。全般的な翻訳も、ポリソーム解析により増加していた。一方、先のレポーター遺伝子を用いた実験結果から、tLeu(CAA)Δint株(SHSC0416)では、野生株に比べ、レポーター由来のHis3pをより多く産生していると推察される。ところが、His3pの拮抗阻害剤である3-ATに対し、tLeu(CAA)Δint株(SHSC0416)は顕著な感受性を示した。顕微鏡観察の結果、レポーター由来GFP-FLAG-His3p融合タンパク質は、細胞質に凝集体を形成しており、Aggregation assayからは内在性タンパク質における凝集体の形成率も高まっていることが示された。従って、tRNAイントロンの欠如により、リボソームに質的変化が生じ、産生されるタンパク質の機能性にも影響を与えていることが明らかとなった。
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