研究課題/領域番号 |
20K06493
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
萬年 太郎 立命館大学, 生命科学部, 助教 (50535763)
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研究分担者 |
八谷 如美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (30408075)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ガン細胞 / 核内構造体 / ncRNA / 質量分析 / 液-液相分離 |
研究実績の概要 |
本研究ではガン細胞で形成される核内RNA顆粒の新規構成因子やRNAを同定し、構造体形成における役割を明らかにすることで、ガン細胞における核内RNA顆粒の生理機構の解明をおこなっている。本研究の結果は核内RNA顆粒の新規構成因子や形成機構などの基礎的解析にとどまらず、ガン細胞特有のncRNAにより遺伝子発現が後天的に制御されているという新たな視点でのガン病態解明につながることが期待できる。 今年度は構造体の構成因子の免疫沈降-MS解析により同定されたタンパク質について解析をおこなった。その結果、構造体に局在する新規構成因子を同定することができた。これらの構成因子のノックダウンをおこなった結果、構造体の形成に必須なタンパク質を明らかにすることができた。また、これらのタンパク質の機能ドメインが構造体形成にどのように関与するのか解析をおこなった結果、RNA結合ドメインと天然変性領域が重要であることを明らかにした。これらのドメインはin vitroでのタンパク質の液-液相分離にも必要であることから、これらのドメインを持つタンパク質がRNAを介して集合し、相分離を引き起こすことにより構造体が形成されることを明らかにした。これらの結果は、Molecular Biology of the Cellに掲載された。 これまでに構造体はRNAを骨格とした相分離によるタンパク質の弱い相互作用により形成されていることが明らかになっていることから、近年開発された細胞内の目的タンパク質と近接するタンパク質やRNAさらにゲノムDNAをビオチン化標識することのできる近接依存性標識法による解析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAポリメラーゼIの転写産物を骨格に核小体近傍に形成されるDBC1核内構造体の構成因子DBC1の免疫沈降-MS解析により同定されたタンパク質について解析をおこない新規構成因子HNRNPLとHNRNPKを同定することができた。これらの構成因子のノックダウンを行なった結果、DBC1とHNRNPLが構造体の形成に必須であることを明らかにした。また、HNRNPLタンパク質の機能ドメインが構造体形成にどのように関与するのか解析をおこなった結果、一部のRNA結合ドメインとプロリンに富む天然変性領域が重要であることを明らかにした。これらのドメインはin vitroでのタンパク質の液-液相分離にも必要であった。これらのことから HNRNPLがRNAを介して集合し、相分離を引き起こすことによりDBC1核内構造体を形成することが明らかになった。 RNAポリメラーゼIIの転写産物を骨格に核小体近傍に形成されるSam68核内構造体の構成因子の免疫沈降-MS解析により同定されたタンパク質について解析をおこなっており、免疫染色の結果いくつかのタンパク質は構造体に局在した。今後はsiRNAによって、これらの新規構成因子が構造体の形成にどのように関与するのか明らかにしていく予定である。 近接依存性標識法による解析においては、細胞内の構造体近傍でタンパク質がビオチン化標識されており、ビオチン化タンパク質の精製もできている。今後の解析により新たな新規構成因子が明らかになることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、構造体の新規構成タンパク質のsiRNAによるノックダウンやタンパク質の機能ドメインについて解析することで、これらのタンパク質が構造体の形成機構にどのように関与していくか明らかにしていく。 また、近接依存性標識法による解析により核内RNA顆粒の構成因子や骨格RNA同定の同定を進めていくことにより、ガン細胞における核内RNA顆粒の生理機構の解明をおこなっていく。また、単離した構造体近傍のRNAからの次世代シークエンス解析により候補RNAを探索する。その後、それらの候補RNAのRNA-FISHをおこなうことで構造体の骨格RNAを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗により次年度使用額が生じた。 翌年度分と合わせて、同定したタンパク質の解析などに使用する予定である。
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