新規ヒストン翻訳後修飾であるヒストンセロトニン化をリアルタイムに検出する蛍光プローブの開発を行った。蛍光プローブを開発するためにはセロトニン化したヒストンを認識する蛋白質が必要であるが、WDR5及びTAF3のPHDドメインが、H3Q5ser及びH3K4me3Q5serと直接結合することを見出した。これらの結合蛋白質を用いてFRET型蛍光プローブ候補を作製した。蛍光プローブの検証のためのセロトニン処理によってヒストンセロトニン化を起こす細胞が必要なため、ヒストンセロトニン化を誘導するTGM2が定常的に過剰発現しているHeLaS3細胞を作製した。この細胞に蛍光プローブ候補を発現させ、セロトニン処理すると、蛍光プローブ候補のうちTAF3のPHDドメインを含むプローブがFRET変化することがわかった。 新規ヒストンアシル化を検出するYEATSドメインを用いた蛍光プローブの開発も並行して進めた。アセチル化ヒストン及びクロトニル化ヒストンと高い親和性を持つGAS41のYEATSドメインを用いて蛍光プローブを作製した。作製した蛍光プローブが、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤TSA処理によるヒストンH3アセチル化及びクロトン酸処理によるヒストンH3クロトニル化によってFRET変化を起こすことを確認した。GAS41は抗癌剤の分子標的として注目されているため、スクリーニングでヒットした新規YEATS阻害剤が、細胞内で活性を持つかどうかを作製した蛍光プローブを用いて調べた。新規YEATSドメイン阻害剤処理後にTSAを加えてもFRETの変化が見られなかったことから、細胞内で新規阻害剤がGAS41のYEATSドメインとアセチル化ヒストンH3の結合を阻害することがわかった。他のブロモドメインBRD4、BRDTを用いた蛍光プローブと比較し、新規YEATSドメイン阻害剤の選択性を示した。
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