研究課題/領域番号 |
20K06504
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
田中 陽一郎 横浜国立大学, 研究推進機構, 技術専門職員 (70450426)
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研究分担者 |
永田 崇 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10415250)
杉本 千佳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40447347)
荻野 俊郎 横浜国立大学, 研究推進機構, 非常勤講師 (70361871)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | AFM / G-quadruplex / データサイエンス / 機械学習 / NMR |
研究実績の概要 |
近年、DNAの特殊な構造の一つであるグアニン四重鎖構造がヒトゲノム(全DNA)上に多数存在し、がん等の疾病の治療のターゲットになり得る事が分かってきた。どのような配列が実際に四重鎖を形成し、疾病と関連しているのかを明らかにすることが喫緊の課題である。 本研究では、四重鎖構造を直接検出可能な原子間力顕微鏡(AFM)を使用して一度に多数のDNA分子の構造情報を測定し、機械学習を活用して新たな四重鎖識別法と四重鎖-タンパク質複合体識別法を開発し、疾病の原因となりうる四重鎖とタンパク質の相互作用を評価する手法を構築することを目的としている。 令和3年度までに、基板上に固定した既知のDNAをAFM(原子間力顕微鏡)によって高解像度に測定し、各分子の粒子としての多数の表面形状パラメータを抽出した。機械学習によって解析して四重鎖DNAを識別する分類器を作成して、一本鎖、二本鎖と四重鎖の分子構造を高い精度で識別する事が可能な表面形状パラメータの同定に成功した。また、大腸菌ゲノムに存在する未知の四重鎖DNA分子について、AFMによる解析とNMRによる解析を並行して行い、AFMによる四重鎖判別法によって四重鎖を形成すると判定されたDNAは、NMRによっても安定な四重鎖を形成していることを示す結果が得られた。 令和4年度には、4重鎖の形成によってGFPタンパク質の発現を抑制可能なレポータープラスミドを導入した大腸菌を調製し、AFMによって四重鎖を形成すると判定した大腸菌由来のDNA配列が、大腸菌中で実際に四重鎖を形成することを同定した。さらに、DNAだけでなくRNAからなる四重鎖構造についても、AFM測定データから抽出した表面形状パラメータによって四重鎖構造を識別可能である事を示す結果が得られ、本研究で開発した四重鎖同定法はさまざまな四重鎖形成の同定に使用可能である事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、令和4年度には機械学習を活用した新たな四重鎖識別法と四重鎖-タンパク質複合体識別法に関する実験を進める予定だったが、使用していたAFM装置の故障により長期的に実験を行うことができなかった。このため、機械学習によって得られた四重鎖判別法の信頼性向上と応用範囲を拡げるための実験を中心に進めたが、研究全体の進捗状況としては「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度には、AFM装置の故障によって予定していた実験を十分に行うことができなかったため、研究期間を延長し、令和5年度に予定していた実験を進める予定である。令和4年度末に、装置の更新によって新型のAFM装置を使用した実験が可能になったため、高速に、さらに高精度なデータが得られると考えられることから、研究は十分に遂行可能である。 令和5年度には、四重鎖と四重鎖結合タンパク質の相互作用の判別法の開発を進め、既に成果が得られている四重鎖判別法の結果を活かすことで、四重鎖DNA単体、タンパク質単体、四重鎖-タンパク質複合体をそれぞれ液中で測定したAFM データを解析し、四重鎖DNA-タンパク質複合体を判別可能な形状変数を特定することで四重鎖-タンパク質複合体の形成を同定する方法を開発する。 本研究課題は、延長後の最終年度である事から、これまでに開発した方法をまとめ、新しい四重鎖同定法及び四重鎖DNA-タンパク質複合体の相互作用評価法として確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度から令和4年度の3年間にわたり、コロナ禍での学会等の中止やオンライン化によって、当初計画していた出張費が非常に低額になったことや、令和4年度のAFMの故障により、予定していた試料調製を行わなかったことや測定消耗品を購入しなかったことが次年度使用額が生じた理由である。 研究期間を延長し、令和5年度に高額の多数のRNA及びタンパク質試料の調製を予定していることから、繰越額を活用し、より多くの試料を作製して測定を行うことで、目標である新しい四重鎖同定法及び四重鎖DNA-タンパク質複合体の相互作用評価法の正確性を上げることを計画している。また、得られた研究成果を学会発表・論文投稿する費用として使用することを計画している。
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