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2021 年度 実施状況報告書

新規標的因子が関わるパラミクソウイルスC蛋白質の機能とその分子基盤, 病原性解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K06507
研究機関広島大学

研究代表者

小田 康祐  広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (60571255)

研究分担者 小田 隆  立教大学, 理学部, 助教 (00573164)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードセンダイウイルス / C蛋白質 / 新規標的因子 / 自然免疫 / サイトカイン
研究実績の概要

センダイウイルス (SeV) C蛋白質は, IFN-α/β, IFN-γなどSeV感染細胞より産生されるサイトカインのシグナル伝達を阻害することで, ウイルスの自然免疫の回避に関与する。C蛋白質によるIFNシグナル伝達阻害には, STAT1との結合が重要であると考えられてきたが, STAT1に依存しない阻害経路をもつことが分かり, 未知の標的因子の存在が示唆された。これまでにC蛋白質の新規標的因子を同定することができ, 本研究では, その新規因子との結合や関連する機能, 病原性発現機構の解明を試みた。C蛋白質とその因子との結合は, 免疫共沈降法などの分子生物学的手法では検出できなかったが, 精製し高濃度に調製することで, ゲルろ過分析より複合体を形成することが分かった。複合体の化学量論を明らかにするため, Native MS解析を試みた。その結果, C蛋白質はその因子と1:2で複合体を形成することが分かった。さらにC蛋白質とその因子間の親和性解析を実施し, 親和性が減少した組換えSeVを作出した。そのウイルスを培養細胞に感染させたところ, IFN-α/βの抗ウイルス活性に対する感受性が増大していた。現在は, C蛋白質がその新規標的因子と結合することで, どのようにしてIFN-α/βに対する感受性が増大するのかを解析している。他方, センダイウイルスはレスピロウイルス属に含まれる。C蛋白質とその新規標的因子間の結合がレスピロウイルス属で保存されているかどうかの解析を試みる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

見出した新規標的因子との親和性が減少したC蛋白質をもつ組換えSeVを作出し, IFN-α/βに対する感受性が増大することを明らかにした。また, C蛋白質が見出した新規標的因子と形成する複合体の化学量論を解析できたことで, 作出した組換えウイルスのIFN-α/βに対する感受性が増大したメカニズムの仮説を立てることができた。現在は精製蛋白質を用いた解析と培養細胞を用いた解析を合わせて, その仮説を検証している。

今後の研究の推進方策

複合体の化学量論から類推すると, C蛋白質はその新規標的因子のリン酸化を阻害することで, IFN-α/βに対する感受性を増大させていると予想された。現在までに, リン酸化された新規因子を単一に調製する方法を確立させた。C蛋白質とそのリン酸化標的因子および脱リン酸化酵素をひとつに混ぜて, 標的因子の脱リン酸化が促進されるかどうかを解析する。また培養細胞にC蛋白質を一過性に発現させて, IFN-α/βのほかに感受性の増大するサイトカインを調べる。さらにC蛋白質がその新規因子を標的にすることがレスピロウイルス属C蛋白質内で保存されているかどうかをヒトパラインフルエンザウイルス1型 (hPIV1) およびhPIV3のC蛋白質を用いて解析する。

次年度使用額が生じた理由

本研究を遂行するために必要な試薬類の購入に係る経費を, 別経費より支払ったため, 次年度への繰り越し金が生じた。本繰り越し金と翌年度分として請求した助成金合わせて、本研究計画を遂行するとともに, 新たに生じた研究の課題に取り組む。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Crystal structure of O‐ureidoserine racemase found in the D‐cycloserine biosynthetic pathway2022

    • 著者名/発表者名
      Oda Kosuke、Sakaguchi Takemasa、Matoba Yasuyuki
    • 雑誌名

      Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics

      巻: 90 ページ: 912~918

    • DOI

      10.1002/prot.26290

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural Insight into the Interaction of Sendai Virus C Protein with Alix To Stimulate Viral Budding2021

    • 著者名/発表者名
      Oda Kosuke、Matoba Yasuyuki、Sugiyama Masanori、Sakaguchi Takemasa
    • 雑誌名

      Journal of Virology

      巻: 95 ページ: -

    • DOI

      10.1128/JVI.00815-21

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The basicity of an active-site water molecule discriminates between tyrosinase and catechol oxidase activity2021

    • 著者名/発表者名
      Matoba Yasuyuki、Oda Kosuke、Muraki Yoshimi、Masuda Taro
    • 雑誌名

      International Journal of Biological Macromolecules

      巻: 183 ページ: 1861~1870

    • DOI

      10.1016/j.ijbiomac.2021.05.206

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ethanol Susceptibility of SARS-CoV-2 and Other Enveloped Viruses2021

    • 著者名/発表者名
      NOMURA TOSHIHITO、NAZMUL TANUZA、YOSHIMOTO REIKO、HIGASHIURA AKIFUMI、ODA KOSUKE、SAKAGUCHI TAKEMASA
    • 雑誌名

      Biocontrol Science

      巻: 26 ページ: 177~180

    • DOI

      10.4265/bio.26.177

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lectins engineered to favor a glycan-binding conformation have enhanced antiviral activity2021

    • 著者名/発表者名
      Matoba Yasuyuki、Sato Yuichiro、Oda Kosuke、Hatori Yuta、Morimoto Kinjiro
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 296 ページ: 100698~100698

    • DOI

      10.1016/j.jbc.2021.100698

    • 査読あり
  • [学会発表] Structural insight into the interaction of the Sendai virus C protein with Alix stimulating the ESCRT-dependent viral budding.2021

    • 著者名/発表者名
      Kosuke Oda, Yasuyuki Matoba, Masanori Sugiyama, Takemasa Sakaguchi
    • 学会等名
      第21回日本蛋白質科学会年会
  • [学会発表] ESCRT依存的出芽に重要なセンダイウイルスC蛋白質とAlix間の結合とその分子基盤2021

    • 著者名/発表者名
      小田康祐, 的場康幸, 杉山政則, 坂口剛正
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [備考] パラインフルエンザウイルスが感染細胞から出芽するメカニズムを解明~新規抗ウイルス薬開発への応用展開~

    • URL

      http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2021/210910_2/

  • [備考] 立体構造を解析、ウイルスの本質に迫る 研究機関連携コロナウイルス制圧を

    • URL

      http://www.pressnet.co.jp/article/200430_07.php

  • [備考] パラインフルエンザウイルスが感染細胞から出芽するメカニズムを解明~新規抗ウイルス薬開発への応用展開~

    • URL

      https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/66507

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公開日: 2022-12-28  

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